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[コメント] ダーク・ウォーター(2005/米)

丁寧な作りで、恐怖感と切なさを絶妙なバランスで描いている。とても優しいホラー映画。
づん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







本来ならば私はホラーというジャンルは避けて通りたいのですが、ティム・ロスの出演している映画は無条件に観るという習性が付いてしまった今の私には、ホラー映画ですら避けられないジャンルになってしまいました。「怖さ」よりも「ティム・ロス観たさ」の方が勝ってしまっているのです。

そんな私の観点からすると、少し期待はずれな結果となってしまいましたが(要はティム・ロスの出番が少なすぎ)、作品としては期待(してなかったけど)を上回る上出来の映画でした。『仄暗い水の底から』は未見なのですが、一緒に観た相手は観ていて、聞くところによるとラストは大きく違っているそうです。私は日本版は未見の為、両作品を比較してのレビューは書けませんので、今作品のみについての雑感を書きたいと思います。

もうとにかく「もったいない!」の一言に尽きます。この作品を「ホラーだから」と言って避ける人がどれほどいるでしょうか。ホラー要素は確かにあるにしても、この映画はホラー映画ではない!観た人なら同じ感想を持つかと思いますが、「家族の在り方、母子の在り方」・・・そういうヒューマンドラマ的要素が強い作品だと思いました。

ジェニファー・コネリー演じるダリアが、母に捨てられた過去を背負っているというトラウマを巧く使って、彼女の深層心理を丁寧に描き、それをきちんと伝える事で、彼女へ感情移入しやすい状態を作ってくれるなど、とにかく作りが丁寧だと感じました。脚本が良かった事もありますが、俳優陣もとても良かったと思います。子を想う母親の姿を迫真の演技で見せてくれたジェニファー・コネリーも然ることながら、まだ幼いアリエル・ゲイドの素晴らしい演技。チャーミングな表情を逆手に取り、ホラー要素をより克明にしているのも巧かったし、悟りきった表情で大粒の涙を流すシーンなどは胸に迫るものがありました。ピート・ポスルスウェイトも不気味な演技で作品の暗い影をより鮮明なものにしていたし、出番が少ないながらも優しいんだか冷たいんだかよく分からない弁護士を演じたティム・ロスもとても良かった!家族と映画を楽しんでいる最中だからと早々に電話を切って館内に戻るも、なんの事はない。一人で映画を観ているという。飄々とシートに埋もれて映画を観ている無表情。もうなんとも言えない素敵キャラですね。作品の中に飄々とした彼独特の存在感を放っていて、作品の良いスパイスになっていたと思います。

ホラー映画だとばかり思っていたので、あまりの切ないラストに胸が苦しくなりました。言い方は正しくないかも知れませんが、とても優しいホラー映画です。

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05.11.18 記

(評価:★4)

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