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[コメント] 影武者(1980/日)

私の中ではやっぱり影武者は三船敏郎だし、山縣昌景は志村喬だ。
づん

私は正直、これが勝新太郎だったら傑作だったのに!とは思いませんでした。そもそも黒澤と勝新なんて成立する訳がない。しかも大河ドラマ・武田信玄世代の私には(大好きだった!)、信玄のイメージが勝新に近いとも思わなかった。だから盗賊を演じきれずに菊千代コピーでいく代役の仲代達矢さんは不憫だなぁと思ったし、黒澤の無念も滲んでいるようで、なんだか観ていて悲しくなった。

私の中ではやっぱり黒澤さんは影武者は三船敏郎を想定して書いたようにしか思えないし(意図していなかったとしても、風林火山の意味を聞いた影坊主が「ほーう」と思わず感心してしまう場面など、やっぱりアレは三船だろ)、山縣昌景はどう考えても志村喬だ。それが良いか悪いかは別として、黒澤組の仲代さんは器用に三船の影武者を演じる事が出来ていたけれども、大滝秀治さんは志村の影武者を演じきれなかったのでしょう。だからよく監督に怒鳴られたのかなぁと思いました。

そもそも三船プロダクションが制作した『風林火山』(残念ながら未見)は黒澤監督が非常にほれ込んでしまい、タイトルと騎馬の戦闘シーンだけでも撮らせてほしいと言ってきたらしい。実際絵コンテも音も完全に出来上がっていたらしく、それを見た三船プロの専務は背筋がゾクゾクしたそうです。それでもやはり黒澤監督を使った時の制作費や日数を考えると、断らざるをえなかったのでしょう。三船ちゃんの苦渋の決断です。

そういう経緯も考えると、このテーマは黒澤監督、どうしても撮りたかったのだと思います。実際、私はこの映画とても面白かった。そもそも武田関連の逸話はどれを取っても面白い。武田二十四武将なんてのは黒澤さん、ものすごく好きそうだもの。私的には信玄の死後のエピソードしか楽しめなかったのが残念ですけど。

しかしお互いプロダクションを設立した事により(特に三船側)、出演作の自由が効かなくなってしまったのは本当に痛い。三船ちゃんもプロダクション経営のためには数をこなすしかなかったんでしょうね。

それから黒澤さんはこの作品を作るにあたり第二の三船を探すために一般オーディションを行ったんだと思うんだ。"三船を見つけた奇跡"の再来を期待して。でもそれを三船ちゃんに責められては黒澤さんも自暴自棄になるしかなかったんじゃないでしょうか。この映画を見ていたら、なんだか色々と悲しくなってしまった。でも本当、面白かった。何度でも観たい映画リストの中に入るくらい。

でもね。音楽に関しては、これはないだろと思いました。センス悪すぎるわ。この映画が黒澤作品ぽくないと思える理由は全て音楽にあると私は思います。

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09.02.06記(09.02.04TV鑑賞)

(評価:★4)

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