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[コメント] 宮本武蔵(1954/日)

本当に無茶苦茶だよ、この人!
づん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







三船"たけぞー"、単に暴れてるだけ。単に騒いでるだけ。もう本当に無茶苦茶。でもそんな無茶苦茶っぷりをこんなに魅力的に演じられるのは本当に三船敏郎しかいないと思います!というか、もう演技の域を超えているんだと思います。これを演技として見ると、心底下っ手クソだと思う。でも演技力なんていう馬鹿げた事で三船敏郎の力量を量る事がもうそもそも間違いなんだと。そんな、それこそ馬鹿げた事を本気で思ってしまう程、彼の存在には説得力があります。もう力技でねじ伏せられた状態。ぐうの音も出ないわ。だって彼を見ていると、本当に演技力なんてなんぼのもんじゃいって思えてくるんだもん。なんなんだろうこの人は。本当に化け物だ。こんな日本人が本当にいたんだね。ありえないわ。信じられない。存在そのものがもう奇跡だ。大好きな役者ティム・ロスをはるかに凌いでしまった程、私はもう三船信者と化してしまっている訳です。

映画に話を戻して。この三船演じるたけぞーは、本当に魅力的。かっこ悪いしダサいし汚いし。でも魅力的。どこまでも真っ直ぐで穢れがなく、体格の良い子供みたいなもんで、単に全力で生きてるだけ。でもたったそれだけの事が凄まじい破壊力を持っているんですよ。常識なんて一切通用しないぐらいの破壊力。又八が女を手篭めにしようとしている時も、たけぞーは無邪気に暴れ馬に乗って一人大騒ぎ。年増女に口説かれ、訳が分からなくなって湖で一人大暴れ。…してたらみんなに置いてかれ(可愛い)。一人ふてくされて木刀か何かで草原の草をバシバシたたっ斬る。ああああああ、なんと力強くも弱い存在…!きっちりと留めてある女心の箍なんて、いとも簡単に外しちゃうんだな、コイツめ。私だってあの場にいたら死ぬ覚悟で口説くわそりゃ。

ただ、たけぞーが"宮本武蔵"として生まれ変わった途端、その魅力が格段に落ちたのも事実(着ていた服がアホっぽいってのも要因かも知れませんが)。やっぱりこの人、暴れさせてなんぼの人なのかも。型にはめて縛ったりしちゃいけないんだ。だからこそ、ラストの橋の上でモジモジしている姿は、抜群に乙女心をくすぐる。「待っててよ!絶対待ってて!」って私もお通と一緒になって念じてはいました。本当に心の底から。でもいなくなるのは分かってたし、心の底のもう一個下で、いなくなっていて欲しいと思っている自分もいたんですよ。ホラいない!ってなった時、ヒドイ、いけずのたけぞー。馬鹿野郎!って罵倒しつつ、嗚呼たけぞー、どこまでもラブ!って目がハートになってるんですよねー。そして欄干に刻まれた野暮な文面の粋なこと!複雑な乙女心も鷲づかみだわ、罪な野郎だ「バカ!」(三船風に)

稲垣浩監督の作品はまだこれで2作目の鑑賞ですが、この人も「三船敏郎」という暴れ馬みたいな手のつけられない素材を上手に活かせる監督さんなのかも…と思いました。

あー。早く家に帰って続きが観たい!!!(ついでにバガボンドも読んでみたいと初めて思いました。)

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08.06.05 記

(評価:★5)

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