むっちり胸の谷間にミニスカート。これは往年の日活ロマンポルノだ。まだピン芸人という用語が一般に流布しない1980年代お笑いスター誕生に登場したでんでんのギャグが「や、みんなハッピーかい」というものだった。そのでんでんが異様なハイテンションで暴走する。そのノリは軽みのない植木等で、いったいこの映画はどんな基調で作られているのか、判断に迷う．ロマンポルノなのか？ナンセンスなのか？ファンタジーなのか？リアルなのか？描写、効果は社会派のしたたかさで、まだ受け取りかたに迷っていると、万引きを問いつめる店長のセリフがやけに紋切り型でチープなB級感を漂わせている。それらのアンバランスが妙に刺激的でどんどん物語に引き込まれて行くと、ほとんどだれる事なく2時間半が過ぎる。エログロといってしまえば確かにそれまでだが、この持続力はただ事ではない。久しぶりに集中した映画経験だった。この監督の映画は初めて見たが、したたかな職人監督と思われる。本作をエンターティメントと嘯いておられるようだが、さもありなん。まごうことない力作である。