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[コメント] 妻よ薔薇のように 家族はつらいよ III(2018/日)

これはいわばもう一つのファンタジー家族のお話。万引き家族とは逆の方向だがファンタジーであることは間違いない。 18.8.16下高井戸シネマ
ぱーこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







西村まさ彦演ずる営業職(58)があれほどステレオタイプな「一家の主」観念の持ち主というところでこの映画が現実ではなく、作り物であることがはっきりする。表現方法としてはアニメの方が違和感がないのではなかったか。でもまあ、それだと夏川結衣演じる妻(50)の肉感のリアリティは出ないので、これでよかった。この夫婦の親の代の橋爪功演ずる引退じいさん(76)と吉行和子の妻(83)との墓問題も新聞の社会面程度のリアリティだ。そういうことが言われていますね、といった関心しか私には引き起こさない。故郷の墓参りでその問題が明らかになるところなどを初めてして全編エピソードの映し方に山田演出手練れのうまさがめだつ。私としては個人の痛切な心情を見せて欲しいのだが。

中嶋朋子(48)と林家正蔵(48)の妻上位の夫婦もある種のパターンから抜けられない。妻夫木聡(38)と蒼井優(33)の夫婦にいたってやっとそこいらにいる出産世代の片鱗がうかがえる。しかし今回の蒼井先生はいやに上から目線の発言が目立って異様だった。義理の兄嫁夏川結衣(50)に対する言葉遣い(最後のどう挨拶したらいいのかしら、に対する、ただいまでいいんじゃないの内容)がもう人生相談されるパーソナリティが相談者を諭す口調であった。兄弟関係による秩序はすでに崩壊し年代の違う夫婦単位の寄せ集めがかろうじて家族親戚関係を装っていることの表れであろうか。

父の亡くなった年齢になった私(69)と妻(64)はこの映画の橋爪功と西村まさ彦の間の世代、ということになるが、まったくあるある感がないのが残念だった。7割方入っている客層はいずれも年配のご夫婦、妙齢のご婦人2人組、あとは独り者老人が多かった。林屋正蔵のずっこけに反応する女性客もそこそこいて、まあ支持されている映画だと言うことはわかった。

(評価:★4)

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