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[コメント] 男はつらいよ 寅次郎純情詩集(1976/日)

諸般の事情
ぱーこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







今回は初めから変。フランス語の夢シーンからして、おかしい。顔しっかり見て置いて、それが兄だとわからない、という設定。私の頭の中には、妹さくら=母+恋人ー性愛、という公式が浮かぶ。この夢のさくらは恋人バージョンである。この式で等式の性質を使って性愛を右辺から左辺に移行すると、妹さくら+性愛=母+恋人 という究極の夢の倒錯となる。いつか見てみたい。

ここでマドンナ1登場。さくらがこの息子満男の担任教師といやに馴れ馴れしいのだ。後の方で教室で会うシーンでは、ほとんどタメ口である。常軌を逸していると言う他ない。人情喜劇だから寅が常軌を逸するのは織り込み済みだが、さくらには今回、一線を超えた描写がいくつかめだつ。寅の家庭訪問妨害に際してしばしば笑顔で寅の暴走を許している。この笑顔はそのまま送っていくという名目でついてくる寅の暴言に対して壇ふみが見せる笑顔に通じるものがある。

そしてマドンナ2の京マチ子である。いや、さすが役者だとは思う。思うが、没落名家の世間知らずのお嬢様がそのまま老けていったには無理がある。壇ふみとの親子設定にも顔立ちは別にして同じ血筋が流れているとは思えない。何か制作側の事情があったのでは、とゲスの勘ぐりをして楽しめない。

初めのタコ社長のセリフ「相手はね、先生だからね、寅さんに惚れたら、これは大問題だよ」からして、すでに寅はマドンナに好かれることが前提となっているのだ。これでは失恋するためには相手がいなくなることが必要となる。キャストにも物語の進行にも様々な齟齬が仕掛けられているように思えて納得し難かった。

このシリーズをあらためて見はじめて、公式のサイトがあるのを初めて知った。また好事家で全48作を全てテキストに起こしている方がおられるのも知った。まさに、これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず。の実例である。こういう方のことを考えると、思いつきをコメントしている私などはとても足元に及ばないのを承知でコメントを続けようと思う。

(評価:★3)

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