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[コメント] 男はつらいよ 寅次郎紙風船(1981/日)

人情紙風船
ぱーこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







初めの夢のシーンからやりたい放題の感じがしている。プログラムピクチャーだから企画者の言うことを聞けばあとは勝手にやります、ということか。

小学校同窓会から悪酔いする寅は久しぶりのデーモンぶりだ。このシリーズがありえない妹さくらのファンタジーだとすると、この初めの展開はあまりにリアルで、ということはこう言う人物は実際にいるので、このファンタジーを壊してしまう。 そこで妹さくらの一面を岸本加世子に演じさせている。テンションが高いわけだ。

今回のキモは音無美紀子が寅の本心を確かめるところにある。寅にとっての結婚は自分の身内が認める人と所帯を持つことに尽きる。今回は友人小沢昭一の遺言があり、とらやの面々も「音無美紀子はいい人だ」ということで納得している。その本人も小沢昭一から駄目押しされている。障害は何もない。寅と美紀子の不幸を求める性向を除いては。おそれつつ一抹の希望を持って寅に聞く美紀子。同じ恐れからそれを冗談にしてしまう寅。両者の幸福を求めてはいけない心持ちが一致してこの話は破談になる。義理も果たさず人情にも外れた寅はまた旅に出るしかない。

岸本加代子は寅を求める妹バージョン。地井武男はありうべき風来坊(マグロ漁師だが)の兄としての寅。このサブストーリーは寅とさくらの人情劇の別バージョンである。

だから最後は、音無美紀子がとらやを手伝い(寅と結婚すればこうなった)、寅は岸本加代子に会いに桟橋に出向く。まったく理不尽な寅の性向をなんとかドラマとして収めるべく監督のサービスであろう。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)G31[*] けにろん[*]

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