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[コメント] 嘆きの天使(1930/独)

中年の危機ってやつだ。ニワトリの芸をする老教授が哀れ。痛切そのもの。
ぱーこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ドイツの高校というのは、ギムナジウムってやつ。日本の旧制高校でこれはエリート進学校であります。そこの教師だから、平成ニホンの『高校教師』なんて柔なもんじゃない。東大駒場の先生と同格です。『忠犬ハチ公』の飼い主です。石部金吉カタブツそのもの。それが踊り子に狂っちゃう。それまで、禁欲的な生活してきたんだもの。人格形成のお手本だったんだもの。官能には弱い。デートリッヒ演じる踊り子も始めはタイプ違うからその気になるけど、所詮世界が違う。楽屋で冷たくされるシーンなんかもうはらはらします。細かなところに手抜きがないのが昔の名画。いちいち納得させられる。前座でニワトリの鳴き声なんかピエロの衣装でやらされる。教授先生もう恥も外聞もない。こんな甘美な世界しらなかったから、溺れちゃうの。それで最後は捨てられる。最後は教室にひとり戻って冷たくなってしまうんです。教授のニワトリの鳴き声が肺腑をえぐる痛烈さで、もうたまりません。踊り子だって、そんなに教授を嫌に思っているんじゃない。けど、物珍しさがすぎれば、うまくいかないのはわかり切っている。女性の現実感覚はシビアだ。感傷の涙はホンモノだけど、それとこれとは話が別。今だって性懲りもせず繰り返されてるんだこの悲劇。将棋の名人が弟子の女性棋士に狂った話があったじゃないですか。世間の人はあの聖人がなんであんな事に、と人ごとだけど、私は全面的にもう共感!

(評価:★5)

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