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[コメント] 積木の箱(1968/日)

増村作品でありながら若尾文子緒形拳も極めてマトモ。その分松尾嘉代が大炸裂! かつての「土ワイの女王」はこの映画で作られたのかと納得。
3WA.C

**ネタバレ注意**
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本作の一郎くんはその後少年院に入り、退所後東京へ引越し高校生となって同級生の北原さんを孕ませることになるのです……というのは冗談だが、内田喜郎「苦悩の思春期シリーズ」として『積木の箱』と『高校生ブルース』は連続ものと言えよう(本当か?)

さて、本作における「一郎くんの飲み物」について。健全な担任である緒形拳は「白い牛乳」をうまそうに飲む。若尾文子狙いとはいえ実に何度も飲む。一方、家族の秘密を知ってしまった直後の一郎くんはそのショックからややひねくれてしまったといはいえ「白い牛乳」を飲んでいた。その頃の一郎くんは川に溺れた幼児を助け、それが自分のせいであると素直に若尾文子に詫び、その純真さを若尾文子に向けるのである。が、緒形拳若尾文子を狙っていると感じ取った瞬間、こともあろうに若尾文子の下着に顔を埋め盗んだ末に緒形拳のロッカーに入れるといういかにも中学生バリの反抗を見せる。

一郎くんはどんどん手のつけられない状態に陥り暴走するのであるが、その時、彼が飲むのは「黒いコーラ」なのである。また、一郎くんを案じて家庭訪問する緒形拳松尾嘉代荒木道子が差し出す飲み物を固辞する。まるで穢れを拒むかのように。

一郎くんが世の中の人間をすべて「善」と「悪」の二元論でとらえ暴走するのに呼応するかのように、登場人物の飲み物の色もまた象徴的にそれを示していたのかもしれない。

で、一郎くんと緒形拳が飲む飲み物を差し出すのはいずれも若尾文子であるという怖さ。増村保造ともあろう人がなぜ若尾文子をこんな平凡な役に? と疑問をもたれる向きもあろうが、役柄はおとなしめであっても物語の構造的には一筋縄でいかない女性を若尾文子は演じていたということになるのかもしれない。

エディプス・コンプレックスを描いた作品かと思いきや、内田朝雄の帝王学をすんなり受け入れようとする一郎くんに、これはやはり彼の思春期物語、すなわち内田喜郎の「思春期苦悩シリーズ」の嚆矢だったというわけだ(本当か?)

(評価:★4)

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