[コメント] トランスアメリカ(2005/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
ゲイのカップルの日常が、さりげなく、好ましく描かれたコミック
「きのう何食べた?(byよしながふみ)」の中で、
主人公の1人・史郎の母親が、
「私はあなたのことを受け入ている(つもり)」アピールのために、
この映画を見たことを伝えるシーンがありました。
史郎は弁護士で、年齢に似合わない若々しいイケメンで、リアリストの節約家で、
女装癖はなく、あくまで男性の心のまま、恋人とぬるく愛し合っています。
そして、基本的にはカミングアウトしておりません。
母親は三白眼で、
「ちっとも恥ずかしいことじゃないのよ!打ち明けなさいな!」
と迫りますが、
そこに見られるのは、息子をそのまま受け入れようとする母親の、
不自然なまでの自然体アピールだけでした。
知識で理解しようとしても、意識の方がついていかない悲しい姿です。
(……のはずですが、ここはやはり笑いどころです)
史郎は、自分は別にトランスジェンダーというわけではないと、
小さな声で、言葉の届かぬ母に反論を繰り返すのみです。
例えば、単に女装癖のある人、ゲイの人、トランスジェンダーの人、
それぞれ説明されれば、歴然たる違いはわからないではないけれど、
どのみち、子供が自分が思い描いた人間に育ってくれなかったという、
親のエゴイスティックな被害者意識に変わりはありません。
で、この映画に興味を持ち、見てみることにしました。
ベースがロードムービーだから、
トラブルその他がいろいろ勃発するのも実に自然だし、
大きな秘密を内包しているので、
何気ないせりふの一つ一つに何とも言えない含みが加わります。
こんなずるい映画、誰が褒めてやるもんか!と思いつつ見たものの、
2人でビールを飲むラストシーンを見て、
遺憾ながら、「★5」をつける決意をしました。
彼女と彼は、きっとこれから、またとない人間関係を築いていくのでしょう。
いいなあ。ずるいなあ。
ブリー本人にしてみれば辛い体験だったのでしょうが、1回女性と寝ただけで、
何年も後に、自分の血道である美青年が突如現れるというサプライズも、
生まれつきの女性にはなかなかできない経験です。
これもずるい。
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