[コメント] コクリコ坂から(2011/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
昭和50年代前半、小学生の私は講談社「なかよし」を愛読していて、この映画の原作者である高橋千鶴さんは「なかよし」執筆陣の中でも好きな漫画家の1人だった。
線の細い美男美女とコメディリリーフの愛すべき脇役たちがガチャガチャワイワイやっている話が多く、自分にとっては未知の高校生活を描いていたので、「私も高校生になったら、こんなBF(彼氏のことね)が欲しい」とか、「学校帰りにサ店(今はチェーンのカフェばっかりで純喫茶もないけど)でコーヒーゼリーとかパフェとか食べるんだー」と、結構本気で友達と話し合ったものだ。
昭和50年代に、リアルタイムのお話として「なかよし」に連載されていた「コクリコ坂」の主人公・海ちゃんは、ぐうたらな下宿人をたたき起こして国旗掲揚(フォトグラファーの母親がそのときいる国の旗を揚げる慣わし)に参加させ、ダイエット狂いでミーハーの妹を「ちゃんと食べろ」と叱りつけ、遊び人のおばあちゃんに手を焼き、なぜかアニメでは女性になっていた“北斗さん”が「憧れの男性」で、風間君のことは最初のうち敵視していた。
風間君は制服廃止を訴えて生徒たちの圧倒的支持を受け、制服堅持派の生徒会長とは犬猿の中…かと思いきや、裏ではちゃっかりつながってる。この2人、高校生の割には世慣れしていて、バイトで芸者やってる女子大生の知り合いがいたりする。
海ちゃんにちょっかいかけてくる黒髪ロン毛の不良イケメンもいる。その不良と付き合っている(つもりの)スケバン女生徒が、海ちゃん・と風間君兄妹説吹聴したりする、そんな下世話だけど、多彩で飽きない話。
あれ……?
そんなわけで、この映画には、私の知っている「コクリコ坂」の要素が全くなかった。
ちょっとしたオリジナルエピソードの追加や設定の改変程度で、原作どおりである必要もないなーと思わせる出来なら納得するけれど、さすがにこれはないんじゃない。
アレンジを通り越して、全く別なものの上書き。要するに、「設定が昭和50年代じゃノスタルジックじゃない」「制服問題とかどうでもいい」「ヒロインがイライラしてるとかわいくない(私にはそういうのもリアルで魅力的だったのに)」「芸者とかもってのほか」「星条旗とユニオンジャックって(笑)」など、ありとあらゆる要素が気に食わなかった結果なのだろう。名前借りて、設定…のようなものをちょこっと借りて、あとは別物。同じ表現者として、自分が気に食わないものに気に食わないという理由でダメ出ししたも同然の作品を、よくしゃあしゃあと世に出したものだ。厚顔無恥もいいところだ。
まあそういうのを全部引っ込めて、全く未知の作品として見ると、別にそんなに悪くもない。でもやっぱり許せない。そういう要素が強すぎて、今回ばかりは、相変わらずのプロ声優締め出しはどうでもよくなった。
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