[コメント] バルタザール どこへ行く(1964/仏=スウェーデン)
マリー(=マリア)であるはずのアンヌ・ヴィアゼムスキーに、聖母性を感じることができなかった。
確かにこの映画における彼女は美しいし、魅力的ではあるけれども、こういう女性像は、むしろヌーヴェル・ヴァーグ向けなのであって、本作の古典的・神話的な世界観とは不釣り合いなようにも思える。
ジェラールを演じたフランソワ・ラファルジュがジャン=ピエール・レオー似だったり、彼らの登場シーンで使われている音楽が60年代のフレンチ・ポップだったりしたのも、そんな印象を強めているのかもしれない。
演出も無駄を削ぎ落としたというよりは説明不足で、一度観ただけでは、登場人物の関係や、状況の変化を把握できないのも難点(この点については、当時本作を観たトリュフォーやベルイマンも、同じ意見を持っていたようだ)。
なにより、マリーの行動には理解できない点が多く、何故ジェラールに惹かれたのか、粉屋に身を許したのか、といった感情の動きが伝わってこないので、あのシーンも、さほど悲劇的には映らなかった。
バルタザールやアルノール、それぞれのエピソードにも関連性を見出しにくく、神話のような大きなうねりを獲得するには至っていないと思う。
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