[コメント] ジョゼと虎と魚たち(2003/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
恒夫とジョゼの関係は
恋ではあっても最後まで愛にはなりえなかった。
幼い頃から彼女の世界は暗くて静かで何もない、
しかしだからこそ満たされた海底だった。
彼女が唯一、世界の外に夢見たのは
一人では見られない「世の中で一番怖いもの(虎)」と、
一人では見たくない「世の中で一番素敵なもの(魚)」を
恋人と二人で見る事だった。
恒夫と出会い、虎は見る事ができた。だが魚は見る事ができなかった。
かわりに二人が見たものは、泳げるはずのない貝が泳ぐニセモノの海。
二人は出会えて良かったのだと思う、例え最初から別れる事が分かっていたとしても。
恒夫は別れの理由を「逃げた」と言ったが、それはきっと違う。
離れたくなくても離れざるをえない、そんな事だってある。
ちょうど潜ろう潜ろうといくらもがいても浮き上がってしまう水中のように。
貝は海底をコロコロと転がるだけ――ジョゼは言った「それもまたよし」
恒夫はいつしか二人の関係に永遠を夢見たのかもしれない、
だがジョゼの永遠は元より海底にしかなかった。
彼女がいつのものように、台所の椅子から降りる(落ちる)
ドスンという音だけが生々しく耳に残った。
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お嬢様のセリフ「身障者のくせに彼氏とるな」
個人的にすごく印象に残った。
アレが健常者の潜在的な本心なのだと掛け値なしに思う。
坂道を比喩的に使っていた事からも分かる。見下しが常。
後ろ向きで複雑な顔して乳母車支えてる女の子が幼い頃の自分と重なった。
でも。
「あなたの武器がうらやましい」「だったらあんたも足切ればええ」
そしてビンタ3発合戦、
(お嬢が)パチーン(ジョゼが)パチーン(お嬢がさらに)パチーン
――これが救いだった。
最後のお嬢の一発は身障者も健常者もなく、
プライドをかけての女と女のぶつかりあいって感じがした。
世に言う「身障者に手を差し伸べる」なんてのは、
実はああいう事なのかもしれない。多少手痛い差し伸べ方だが信じられる。
主題は「身障者」ではないのだと思う。
それでも、ついついそこに目がいってしまうのは、
身障者の子という微妙な立ち位置ゆえの視点。
多分一生ついて回るだろう。それもまた良し。
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