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[コメント] ハウルの動く城(2004/日)

盲目的に好評価する人が多いため「分からないよ、合点がいかないよ」と思ってても言いづらい人へ →レビュー
ebi

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この作品、評価が○と×でバッサリ割れると思う。僕は×の方。×というか、○×と言えないくらい“分からなかった”これが正直なトコ。

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まず評価の前にひとつ言いたい事が……

どうも変だ。「よく分かんなかった」と言うとなじるような風潮にあるように感じてならない。――頭が固いね〜。心が老いてるね〜。大人になっちゃったんだね〜。もっと気楽に見ればいいんだって〜。感覚的に見ればいいんだって〜。素直に見ればいいんだって〜。子供みたいにさぁ――(´〜`)←たいていこんな顔して言われる。さも「分かんない」と言う人がおかしい!……みたいなそんな風潮だ。これのせいで「よく分かんなかった」とおおっぴらに言えない人、少なからずいるのではないだろうか。

そういう人! ええよ! 分からなかったのなら、そう言ってしまえばええと思う! そう思ったからって変だったりダメだったりするわけじゃない。そう思った事を押し込める必要はない。「え〜?なんで〜?どうして〜?」と疑問に感じたならそれを素直に認め、理解しようとする方が、作品に対して真摯な姿勢だと思うから。

逆に、「よくわかんないけど、とにかくよかったですぅ〜。なんとなくカンドウしました〜」なんて、盲目的・抽象的な評価をする方が失礼だと思う。あまつさえ「よくわからなくても作品を楽しめたワタシって純粋♪」なんて言い草にはあきれて物が言えない。ジブリ作品は等しく“純粋さ”なんていう眉ツバなプロパティを計るリトマス紙なの? そもそも“分からない”って段階……内容に到達できていない、世界に飛び込めてないって段階で、良いも悪いも感動もないだろう。そういう人こそ“ジブリ=良いもん”と頭が固まってないだろうか? 心が鈍ってないだろうか? 多数派へ傾倒して安心感を得るズルい大人になっちゃってないだろうか? 問いたい。子供の頃、『トトロ』を始めてみた時のような優しく深くあたたかく、いつまでもワクワクホンワカするような、そんな本当の思い入れがこの作品に対しあるか?

「分からんのはお前が頭悪いだけだー」ってご意見ごもっとも。ただ、そういう“分かってる人”の多くが原作も読んでる事が多い事も事実。原作があるジブリ作品はいくつもあるが、公開直後というのに、これほど原作が取り沙汰される作品はない。少なくとも僕はこれまでの作品は原作を読まなくても十分楽しめた。これはとりもなおさず、それだけこの作品の第一印象が“分からない・合点がいかない”って人が多いって事なのではないだろうか。

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以下、具体的な感想・評価

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人がジブリ作品に求めるのは何だろう(あえて“映画”でなく“ジブリ作品”と言うが)

テーマ? ストーリー? ノスタルジー? ファンタジー? 美しい絵? かわいいキャラクター? 迫力のクリーチャー? 細やかな心情描写? 大道具・小道具? 遊び心? もしかしたら気持ちいい飛行シーンであったり、音楽やら声優やらといった側面的要素かもしれない。人それぞれだと思うけど、これら全要素が過去の作品に比べ薄っぺら、そして合点がいかない事が多すぎる。

まずテーマ、“恋”との事だが僕はジブリがこれについてそんなに深く掘り下げてるとは思えない。“ふたりが暮らした”ってコピーが気持ち悪く宙に浮いてる。内容にガッチリはまってるとは思えない。諸般の事情によりーの、コピー後付けーの、そんな匂いがプンプンする。押し付けの教訓ほのめかしなんていらないよ。逆に冷める。僕としては当初の“この城がうごく!”の方が素直にズシンと心に来る。

しかし、この城も……なんだかよろしくない。「とにかくデカくてでたらめな城を歩かしてぇ!」って作り手の気持ちは分かる。受け手としても大賛成「とにかくデカくてでたらめな城が歩いてるトコ見てぇ!」これは単純にワクワクするのだ。ところがどうだ……スクリーンの中で見た動く城は荒れ地をチョコチョコ歩いてるだけ。背景が“荒れ地”なだけに大きさを引き立てる比較対象も弱くどうしてもしょぼく見える。例えば建物を蹴散らしながら街の中をガシガシ進んだり、戦車や空飛ぶ戦艦なんかと戦って圧勝! といった、映画的にもっと分かりやすく活躍するシーンがあっても良かったんじゃないかと思う。あくまで映画的にね。

同じ事が他の要素にも言える。描写不足。いまいちハウルの人間性がつかめない。気弱と言いながら気弱に見えないのは、そういうシーンが薄いから。ソフィが老婆から少女にどう戻るのか、これは重要な要素だと思うが、いまいち切実さが伝わってこない(本人あっけらかんとしてる)荒れ地の魔女もサリマンもいまいち強さ怖さが伝わってこない。荒れ地の魔女なんてあれじゃザコ扱いじゃないの。それ以前に魔法が魔法として活躍してるシーンが薄いから具体的な魔法の力が見えてこない。終盤「家族」みたいなトコへ落としてるが(これも“?”なんだよな)ヒン・弱った荒れ地の魔女と在来組とのふれあいのシーンが薄いので、最後まで彼等は部外者的に感じられた。

次にキャラクターについて。これは個人的・勝手な趣味でしかないが、ヒンは動きはかわいかったが、あの前髪みたいなのが生理的にイヤ。鳥になって飛ぶハウルは永井豪的でこれまた生理的にイヤ。カブもなんだか80年代のポップな香りがやっぱり生理的にイヤ。カルシファーはなかなか良かったけど、過去の作品にみられるような驚きがない(悪い言い方をするとジブリじゃなくても“ありがち”なキャラ)唯一、マルクルが良かったかな。それにしても過去の作品のキャラクターほど、お気に入りにはなれなかった。

そして何より説明不足。これに尽きると思う。とにかく「分からん・合点がいかない・納得いかない・共感できない」が多すぎる。つまり「こいつはイイモンかワルモンか」とか「今なにをしてて、これからなにをしようとしてるか」とか「あれをこーするとOK!」みたいな最低限の筋が最後まで曖昧なままだった。

背景(世界自体)からして分からない。魔法は社会的にどう絡んでいるのか分からない。どことどこがどういう理由で戦争してるのか、分からない。人々にとって、“魔法使い”や“動く城”や“荒れ地”が、どういう位置付けなのかも分からない。ハウルや荒れ地の魔女は普段なにしてんのか分からない。なぜ魔女がハウルをあそこまで付けねらうか分からない。ハウルが戦場を飛び回って戦ってる意味が分からない。どうしてソフィは老婆にされたのか分からない。“どうすれば老婆から少女へ戻れるか”もよく分からない。戻ろうとしてるかどうかすら分からない。髪の色が変わっただけでハウルはなぜあそこまでドロドロになったのか、分からない。ソフィーが突然、若返っている意味が分からない。サルマンのさしがねで毒虫をもってきた母親(?)よく分からない。城を壊した意味が分からない。壊したのにすぐちっこい城に戻した事、分からない。契約の秘密も具体的に何だったのか分からない。ラストも盛り上がった音楽などで何となく何かを成した事は分かったが、それが何だったのか分からない。なぜカブにキスしたのか分からない。そのカブが実は隣の国の王子だった……(こんなもん必要なの? 唐突すぎ)分からない! ハァハァ……数えあげればキリがない(この辺の“分からなさ”はkionaさんのコメントにブンブン頷きました) これらすべて、全く分からないってわけじゃない。なんとなく分かる。でも全てが“なんとなく”で、かえって気持ち悪い。感情移入できない、つまりは物語に入っていけない。断片的な絵はきれいだし、面白い。だがそれらが繋がりまとまりある形に収まってるとはどうしても思えない。

あと、ついでにエンドロール。劇場で見たけど、終わっても誰も立たなかった。「ジブリ映画だ、エピローグがあるに違いない」みんな期待してたんだと思う。なのに……えー、黒バックに文字のみ? 素っ気なさすぎ〜、ガッカリ〜。裏切りと言わないまでも肩透かし。これひとつとっても“だだくさ”な印象がある。「エンドロールどうします?」「そんな余裕ねーよっ! 黒でいいよ、黒で!」そんなやりとりを想像してしまう。

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以上、文句ばっかり……スイマセン。いえね、それなりに楽しめはしたんよ。ミーハー的な視点で見れば最新作なだけに「これまでのジブリ作品で最高!」って思わす要素もあったにはあった。しかしだからこそ辛い。ジブリ自身がジブリだって事にあぐらをかいていないだろうか。過去のジブリ作品の人気を傘にきてないだろうか。ハウルの声にキムタクあてるならあてるでいいけど「はいはーい、ジブリでーす。ファンの皆さーん、こんなの見たいんでしょー? ホラホラ、見せたげますよー」こんな受け手に対して媚び舐めた根性だとしたら正にガッカリだ。もっと最悪な勘ぐりをすると、昨今の“魔法”ブームに乗っかって「ジブリが魔法を描くとこうなりまっせ」的意味合いがあったんじゃないか……とすら考えてしまう。もしそうだったらコレ、作り手to作り手、単なるプロモーションだもの……(受け手巻き込まないで)穿ち過ぎかもしれないが今後のジブリがディ○ニーのようになってしまわないかと心配なのだ……。ジブリがジブリたる作り手の良心・受け手への配慮が見えない。悲しい。「よくわかんないけど、とにかく良かったで〜す。なんとなくカンドウしました〜」なんて薄っぺらい評価を山ともらったからって、それが次代に繋がるのか・残るのか。ジブリに訴えたい。ブランドを育てて作品とせず、作品を育ててブランドとしてほしい。僕が見たかったのはジブリ“的”作品じゃなくジブリ作品だったのに……とても残念。採点は2。愛ゆえの2ッス。

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追記

宮崎監督、だいぶお歳めしちゃったけど、これを最後の監督作品にしてほしくない。プロデューサーの鈴木さんが何かで話してたけど、『もののけ姫』の前に、イモムシが隣の街路樹に移るまでの冒険を描くって作品の構想があったらしい。鈴木さんは「宮崎が歳くっちゃってきてるから良い意味で攻撃的な作品を作るなら今しかない」って理由でもののけ姫を進めたらしい。だったら、それこそ今しかない! このイモムシ作品やるべきだ! 「まだまだ若いモンには負けーんッフガッフガッ」的な気負いはもういい。今後の宮崎監督には再びトトロのように優しく深くあたたかく、でも強い強い! 最強!! そんな作品を描いてほしいなぁと切に切に願う。

(評価:★2)

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