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[コメント] 華氏451(1966/英=仏)

炎と記憶
スパルタのキツネ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







三島由紀夫は実際の放火事件を基にした小説「金閣寺」のなかで、金閣寺が放火されるに至る様を、主人公の心境の変化とともに克明に描いた。主人公にとって、金閣寺は第2次大戦で消失すべき寺院だった。そのいつ消え去るとも知れない儚さは彼の金閣寺への美意識を一層掻きたて、やがては金閣寺は彼のあらゆる感情の背景にまでなっていった。

ところが金閣寺は戦後も消失せずに残され、主人公にとって失望と喪失感の象徴となる。「燃えなくては、燃えなくては」  彼はこの世に存在する金閣寺ではなく、「美しき金閣寺」の記憶のみを求めたのであった・・・。

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本作『華氏451』は、燃やされる本と、人が本になる様を描いており、炎と記憶の美、存在と喪失の美を描いている点、トリュフォー監督の本作と三島の「金閣寺」とでは類似点が多い。もちろん登場人物全ての人が進んで本を燃やしたわけでないが、最期には本の愛好家もそれを受け入れてた。本の魅力を強調するには、本が燃え逝く様を描く以上の演出はない。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)Orpheus 煽尼采[*] 3819695[*] ダリア[*]

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