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[コメント] ヘブン・アンド・アース(2003/中国)

騎馬上の合戦は大変迫力あります。全体として中井貴一演じた遣唐使の来栖の熱演が裏目に出たような気がする。考えてみればいいお話なのに、その魅力が出し切れていないのは残念。
スパルタのキツネ

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最近のアジアン映画で、歴史ものアクションのなかでは、『HERO』『MUSA』などと比較すると純粋なアジアの印象を最も受けた。なかでも谷を流れるように撮影した「紅い谷」でのトルコ馬賊との対決は、騎馬を用いた合戦としては『七人の侍』以来の迫力を感じるほどでした。隊長に付き従う部下、それに馬賊の安(ワン・シュエチー)もそれぞれ良かったと思います。

ただ、中井貴一の演じた来栖はものの見事に唐人に染まっており、熱演だと思うのですが、これが裏目に出てしまい、故郷に母を残した「倭人」としての印象が薄くなってしまった。結果的に李隊長(チアン・ウェン)と文珠(ビッキー・チャオ)の結びつきと、仏舎利の偉大さの結びの一言でラストを迎えたのは残念。また、「人を殺すのも罪」「殺さずも罪」としたテーマもあいまいに終わってしまったようだ。

本作で日本人来栖を登場させた意図は、明らかに日本の観客を期待してのことだろうが、日本での評判があまり芳しくないのも、来栖に日本人像を感じないことが大きいと思う(私が鑑賞した時など、公開後一週間だったにもかかわらず(平日レイトショー)、200人入る劇場でたったの2人だったのには驚きました)。

ラストの来栖は母に会えると言って死にますが、この一言は母が既に世にいなかったことを示唆しているようで、来栖が里帰りを望んだのは、実は母の墓参りをしたい為だった、と言うことなのかもしれない(冒頭の手紙は母と日本語を忘れない為に書き記していた?)。こう考えると、エンディングは、お釈迦様の力で李隊長も来栖も、罪人を殺す命令に背いたもののその望みが叶えられた、というお話の気がする。 うーん、おしい。

(評価:★4)

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