[コメント] アパッチ砦(1948/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
徹底して信念を曲げないヘンリー・フォンダは、一見分からず屋のように描写されているが、開拓期のアメリカという野心に満ちた一国の代表として、誇りと信念に満ち溢れた司令官である。こういう人は生きている間に疎まれて、死んでその偉大さが分る典型なのでしょう。また、戦陣で常に先頭に立つ姿からも、南北戦争当時の勇敢な司令官を思わせる。
ラスト、圧倒的な不利の状況にもかかわらず、「私は一将校ではない。アメリカの代表である」と、一切の交渉をせず、誇りを持ってアパッチ族との戦闘に及び、部下と共に果てるところなど実にしびれてしまう。このあたり、いまの好戦的なアメリカとは、戦争の目的そのものが異なるような気がする。現代のアメリカの軍人で誇りを持って戦地に赴いている人は少ないのではないだろうか?
もしかしたら、アメリカにとってインディアンもイラクも相手が違うだけで、好戦的野心からくる戦争と言う意味では、本質的には同じではないか?と言う人がいるかもしれない。 確かにその一面もあるだろう。 しかし、アメリカのインディアンを、ロシアのチェチェン、中国のチベットに代表される諸問題と合い照らして考えてると、それぞれ複雑な国家の形成過程を経た民族問題・内戦であって、日本にも、江戸時代に薩摩藩が琉球国を征服した経緯があって今の沖縄県と過去からの諸問題があるように、イラクなどに対する対外戦争(内政干渉)とは同類に区分できない。
私見ながら、過去の戦争に伴う犠牲について誤解を恐れずに言うと・・・、ある国がその国の建国以来「仲良くしましょう」的な平和主義だったら、過去の戦乱の世界史において到底存続が困難だったことはおそらく確かなわけで、平和を重んじる今だからこそ、その国家が経験した戦乱で犠牲になった先祖に敬意を払い、学ばなくてはならないと思う。
親から息子・娘に教えることは多々あるけれど、本作が「誇り」に重点を置いているように、人としての「誇り」が一番大事なことなのでしょう。これは他の映画でもたまに取り上げられるテーマでもありますが、口で伝えられるものでなく、行動で示すしかないので、親にとって難しい課題といえます。まず第一に親に「誇り」があるかどうかも問題なわけで・・・。そう考えると、平時に「誇り」を保つことは極めて大変なことなのかもしれない。
ヘンリー・フォンダの司令官が、娘を危地に連れて行った将校との結婚を許さなかったのも、妻を守る、家族を守ることの責任と誇りを教えたかったからだろう。それは、ラストで、ジョン・ウェインとその将校を後陣においていったことでも裏づけされていると思う。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (4 人) | [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。