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[コメント] ベルンの奇蹟(2003/独)

敗戦後、意気消沈した西ドイツ。スイスWCでの自国の番狂わせの大活躍と、敗戦の心傷癒えない父を迎え崩壊寸前の一家とシンクロさせながら描いた作品。癒しのスポーツ映画、感動作です。映画には珍しくサッカーを題材にしてます。アディダスファン必見です。
スパルタのキツネ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







鑑賞前は、ワールドカップにもっと重点が置かれていると思っていてそれを楽しみにしていたのだが、戦争の後遺症を残す親父とその家族の再生の物語だったのはいい意味で意外だった。 特に親子が旅発ってからの後半からはぐいぐいと引き込まれていった。 親子旅と言えば、近年の作品では『父、帰る』『ロード・トゥー・パーディション』を思い浮かべるが、鑑賞後にこれらが深い余韻を残す作品だったのに対し、本作はスポーツらしく心地よい余韻を残してくれた。

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11年間、ロシアで強制労働をさせられた親父が戻ってきた。何をしようにも思い通りに行かない親父は、自分のスペースがないことに気がつく。母親と子供達には個々のスペースがあった。親父だけスペースがない。このような居心地の悪さは、家族そのものに、サッカー競技とチームプレーを重ね合わせているからに他ならないだろう。

バーテンの母親がキーパーなら、座る兄にはスイーパー、ウェイターの姉にはミッドフィルダー。末っ子マチアスですら、エントランスボーイとい芽が出ていないながらもフォワードのポジションがあった。 親父だけが、守ろうにも、パスを貰おうにも、パスを出そうにも、シュートを打とうにもポジションもスペースもなかったのだ。

2人がベルンに向けて旅立ったとき、ワールドカップでラーン(ボス)投入により大活躍し始めたドイツナショナルチームと親子の感情が見事にシンクロする。父と子はベルンに向けて2トップになったのだ。ベルンの競技場に駆けつけたマチアスはボスにボール(ラストパス)を渡し、ボスのゴールはドイツをWC覇者に導いた。

ラスト。「ボスが一番上手かった」と言う父親に「父さんもボス並に上手かったよ」とマチアスは応える。それを聞いた父親が「凄いほめ言葉だな」と言葉を漏らすのが印象的だ。 親子2トップも見事にゴールを決めたのだ。

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余談

1961年にベルリンの壁が出来たことにより、この一家も分断される運命にあるであろう次なる悲劇と、1989年の壁崩壊による一家再会の感動はここでは描かれていない。

(評価:★4)

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