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[コメント] スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐(2005/米)

ルーカス監督、今まで多くの感動を有難う!
スパルタのキツネ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







スターウォーズの小ファンです。終にこの日が来てしまいました。このシーリーズだけは予告編に目を閉じ耳を塞ぎ、白紙で鑑賞するために万全の防御を期してきた私。 そんな甲斐もあってかなかろうか、大変感動しました。もう最高です。ワンシーンワンシーンに目がクギ付け、正直泣くことも忘れてました。 スターウォーズファンでありつづけて本当に良かった。

そんなスターウォーズへの想いを込め、EP2に引き続き長文レビュー(EP3を中心とした総集編)を書いてしまいました!! スターウォーズはその設定一つ一つにいろいろな解釈ができる作品だと思います。 当コメントには最後になったその“楽しみ”を思う存分に記しました。 私的な解釈&妄想がほとんどですが、少しぐらいは参考になるかもです。 興味のある方、時間があるときにでもご一読いただけると嬉しいです。

スターウォーズシリーズ通してのコメントとなっていますので、EP1〜EP6のネタばれにも遠慮なく触れていますので未見の方はご注意を。

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<<シリーズ名物のオープニングカット>>

本作のオープニングカットには圧倒された。スターウォーズといえば、旧3部作のスター・デストロイヤーが定番だったように、広大な銀河をバックに宇宙船が移動するオープニングカットが名物となっている。

皇帝が支配する旧3部作はスター・デストロイヤーの登場で始る。EP4はレイア姫の乗船した外交宇宙船(→惑星オルデランの宇宙船;EP3のラストでも登場、この船内で双子は生まれた。EP4では反乱軍リーダーとして成長したレイアがベイダーに追跡される所から始る)を追うようにスター・デストロイヤーが登場し、EP5では、ほぼ正面のアングルで画面奥から我々鑑賞者の方に突き刺さるように向かってくる。そして、EP6では、画面奥の再建中のデス・スターに向かって我々の頭上に圧し掛かるように進んで行く。

クローン戦争も皇帝支配も始っていないEP1とEP2は小型宇宙船が軸となる。EP1は、共和国特使のクワイ=ガンとオビ=ワンを乗せた共和国の宇宙船が画面左から右へと進行し、EP2では、コルサントへと向かうパドメを乗せた光り輝くロイヤル・スターシップ(ナブーの宇宙船:EP3でも登場)が画面下から上へと“回転”しながら進行する。

それぞれの宇宙船の種別、進行方向、目標物などそれぞれのエピソードを象徴していたと思われる。また、EP2で初めて回転のモーションが入れられているのは、EP2が転機のエピソードとの暗示だったのだろう。

さて、本作EP3についてだが、大型のバトルシップ(スター・デストロイヤーの原型か?)を上からのアングルで登場させた。 上からのアングルはシリーズ初めてだ。 周りには異型同型のバトルシップが入り乱れた戦闘が広がる。今までに観たこともない宇宙空間表現だ。EP2以上にシリーズの規則性を無視した本作のオープニング。このような描写には時勢のカオスを感じさせるとともに大銀河を巻き込んだ桁違いのクローン戦争を瞬時に実感させる効果があった。

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<<ドゥークーの最期>>

ドゥークー伯爵の最後はあっけないようだが、それはアナキンがそれだけ成長したことの証でもある。EP2でオビ=ワンそしてヨーダですらドゥークーを打倒することが出来なかったことを考えると、この時点でアナキンは肉体的にジェダイ最強の騎士になっていたと言うことだろう。それだけに評議会に加わりながら、若年との理由でマスターとして認められないことに対するアナキンの不満はオビ=ワンでなくても感じ取れる。

ドゥークーの打倒に始まり、アナキンの評議会入り・・・ 全てはパルパティーンの謀略だった。本作でパルパティーンがアナキンに無慈悲にドゥークーの処刑を指示する仕草や、パルパティーンがアナキンに最初に関心を抱いたのがダース・モールの存在したEP1であることを考えると、パルパティーン(ダース・シディアス)にとってドゥークー伯爵は、アナキンを引き込むべく、彼の実力を自他共に認めさせ、アナキンの自尊心を刺激するための一時的な存在だったのだろう。 

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<<夢−−恐怖と怒り>>

EP2のコメントに触れたように、私はアナキンがダークサイドに落ちるのは、パドメを殺された「怒り」によるものと予想していた。しかし本作で、それはパドメが死ぬことへの「恐怖(夢)」に端を発しており、ダース・ベイダーの人格を決定付けたのは、パドメを死に至らしめた“自ら”に対する「怒り」であることがわかった。

結果として、パドメは間接的ながらダース・シディアスの謀略で死ぬことになり、それにベイダーが怒りを感じたことからあながち間違っていた予想ではなかったが、その間接的手段がアナキンの「夢」であったこと、パドメを「殺された」のではなく「殺してしまった」とベイダーが自噴したことに、SWの奥行きの深さを感じた。

EP2で、母の殺される夢にうなされたアナキンに対し、夢に囚われるのは危険だと諭していたオビ=ワン。このオビ=ワンには少々冷たさを感じたのだが、本作でその理由がわかった。ダース・シディアスがアナキンの最大の関心事“夢”(恐怖)を知っていたように、人の弱みに付け込み、夢を操る力もまたダーク・サイドの能力の一つであったのだろう。

しかし、ラストでパドメは自らの意志で生きる道を放棄したと明かされる。パドメの生命はダース・ベイダーとなったアナキンを救うことが出来ない。もし、パドメが生きていれば、ルークはジェダイになることもなく、レイアも反乱軍のリーダーにならなかっただろう。即ち、ダース・ベイダーは改心せず、皇帝が倒されることもなかった。

<<夢−−絶望と希望>>

そんなパドメはただ悲嘆に呉れていたわけではない。 「ルーク!」「レイア!」と名づける彼女の声に後の世への「新たなる希望」が託されていたのは明瞭だ。 このことは、後にルークがレイアに2人がスカイウォーカーの血を引く兄妹と明かす場面(EP6)で、レイアが母の「面影」のみを記憶していたのに対し、ルークはベイダーとなったアナキンに残された善良さを信じる母の「感情」のみを記憶していたことからも判る。2人はそれぞれに託された母の思い(夢)を受け取っていたのだ。

故郷ナブーでの葬儀の棺に横たわるパドメの腹が大きかったように、双子の誕生は極秘事項だった。その結果、EP4でダース・ベイダーがルークを息子と悟るまで、2人の存在を帝国軍側に隠すことに成功した。このため若き日のルークが皇帝による夢の脅威に晒されることもなかった。

<<夢−−アナキンとルーク>>

EP5ではダース・ベイダーはハン・ソロとレイアを餌として、彼らの身の危険を知らせる夢をルークに仕掛ける。仲間を救いに飛び立とうとするルークに向かって、オビワンとヨーダは「人の死はそれぞれの運命」と(アナキンの時と同じように)止めようするが、ルークは飛び立った。この時のルークの感情は、アナキンのように愛する人を失う「恐怖」ではなく、友人を救おうとする「友愛」であった。いかなる危機に直面しようとも弱者を見捨てない友義心、それはジェダイの美徳である。EP3で危機に直面したウーキー族を救いに行ったヨーダにもそれを感じることが出来る。 皇帝にジェダイの美徳を悪用され、多くのジェダイを失ったヨーダとオビ=ワンにすれば、旅立つルークを心配するのも無理も無いだろう。 人を救いたいと願う異なる感情の「恐怖」と「友愛」。この違いは大きい。

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<<C3POとR2D2>>

C3POとR2D2はアナキンの変心と双子の誕生の意味をどのように理解したのだろうか? ベイダーと化したアナキンが、パドメの宿所から分離主義者の抹殺に飛び発つ際の2体のドロイドのやり取り(R2D2とC3POがアナキンの様子を心配しながら、お互いの行く末を案じあうやり取り)と、双子が生まれた分娩室の窓際にひっそりと立つシーンが印象的だ。

その機械的、且つ人間的な描写からは時として言葉にはならない感情をも読み取ることができる。 振り返って考えると、エピソード全てに接してきた2体のドロイドは登場人物の誰よりも人間的だったように思う。 本作でアナキンとパドメの双子の誕生という重大な秘密を共有した2体のドロイド。 C3POのみ記憶を消去されてしまうのは、お喋りな性格上やむを得なかったのだろうが、EP4で見る限り記憶消去後もC3POとR2D2の友情は変わらぬままだったようだ。

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<<双子の宿命>>

シミ・スカイウォーカーが処女懐胎でアナキンを生んだように、パドメがアナキンとの間にルークとレイアの双子を生むのは宿命と言っていいだろう。 少年のアナキンがパドメに一目で心を奪われたことから(EP1)悲劇が始まったようにジェダイに恋愛の感情はタブーである。このことは何度となくオビ=ワンがアナキンに諌めていたことなのだが、父親を持たない、すなわち愛の結果生まれたわけでないアナキンが恋に落ちたのもまた宿命なのだろうか。

ルークはジェダイに、レイアは反乱軍のリーダーになるそれぞれの宿命のもと、タトゥイーンとオルデランに双子は別れて育つことになった(EP3)。 そんなルークが最初に心を奪われた女性はフォログラムのレイアだった(EP4)。ルークは続き様にハン・ソロとチューイにも出会った。ルークは多くの親友に恵まれ友情に厚く成長したが、恋には落ちなかった。結果的にジェダイの教えに従ったことになるが、ルークとレイアが兄妹である宿命がアナキンと同じ道に進むのを防いだのかもしれない。

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<<ジェダイの最期>>

なんとも悲しい最期だ。このとき初めてダース・シディアスがライトセイバーを使うのだが、あっという間に3人のジェダイを倒してしまう驚異的な強さだった。マスター・ウィンドゥーはもう一歩のところまで追い詰めながら、アナキンの裏切りによって破れてしまう。アナキンは一度は後悔するものの、瞬時にダークサイドに落ちてしまった。文字通りダース・ベイダーの誕生だ。

ベイダーが誕生したその頃、ダース・シディアスの謀略により、ジェダイは銀河に塵じりになっていた。ジェダイ抹殺コードが発行されたとたんに、ジェダイが正確に一人一人と殺されていく。ジェダイの子供達もベイダーと化したアナキンに抹殺されてしまった。 このようなジェダイの最期は、コロッセオで一斉に会したジェダイがドロイド軍に包囲された絶体絶命的な窮地を救ったのがヨーダ率いるクローン軍だったことを思い起こすとあまりに切ない。このときからジェダイとジェダイが指揮するクローン軍の構図が始っていた。 全てがジェダイを陥れる罠だったのだ。

EP6でダース・ベイダーに放り投げられる皇帝の最期は、本作でベイダー誕生の場となったマスター・ウィンドゥーの最期と重なる。この時、皇帝を打倒したベイダーの脳裏にはウィンドゥーの無念の表情がフラッシュバックしていたのではないだろうか?

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<<オビ=ワンとアナキン>>

それまで見劣っていたオビ=ワンがアナキンに勝てたのは、ジェダイからシスへ、正から負へと変遷するアナキンのフォースの虚を突いたからだろうか? 帰りの宇宙船でのパドメの最期の言葉「アナキンにはまだ良心が残されている」から考えると、アナキンが生き延びたのは既定の事実で、オビ=ワンはアナキンがこのまま死ぬとは思っていなかったことになる。アナキンにとどめを刺さないオビワンもまた、予言を信じ、ベイダーとなったアナキンにも一縷の希望を託していたのかもしれない。

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<<皇帝の描写>>

共和国元老院でのパドメの「これで自由は死んだ、拍手喝さいの中で…」の台詞から現在のアメリカを暗喩しているのではないか?との評が全米公開時に多く出たそうだが、本作の皇帝がものの一日で完全独裁権を握る描写に独裁者ヒトラーを思い出した方も少なくはないのではないだろうか?

第一次大戦敗戦の混乱の議会制民主主義の中で「民主的」にナチスを最大政党とすることに成功したヒトラーは、完全独裁を握るべく総統となるに際して大々的な粛清を行う。粛清の対象はそれまでヒトラーを支えてきた生え抜きの軍人で極右的発言が目立つようになってきた盟友レーム率いる突撃隊だった。同時にヒトラーはそれまで衝突を避けていた共産勢力をも一斉に粛清した。これが世に言う血の粛清の概要なのだが、世界史上の独裁者としてヒトラーほど計画的、且つ迅速に独裁に必要な条件、すなわち左右両極の打倒を達成した人物はいないと言われている(注;決してヒトラーを良く言う意図はありません)。

外見こそ違え、本作の皇帝による粛清や独裁達成まで議会と演説を重視した姿勢は、ヒトラーの行動と重なる。 では、本シリーズで皇帝が独裁を達成すべく粛清した極右・極左勢力はどの勢力なのだろうか、考えてみたい。 極左がドゥークー伯爵とグリーバス率いる分離主義者であることは疑いようが無いだろう。 そして、(薄々感づいている方もいるだろうが)極右勢力に当たる存在が他でもないジェダイなのである。

誤解しないで頂きたいが、ジェダイほど右からも左からも遠い中立な存在は無い。しかし、フォースが翳りバランスを失ったジェダイは、ダース・シディアスの思惑通り極右の役割を担わされてしまった。 ジェダイのアンバランスは、シスのバランスだったのだ。 EP1からシスの暗黒卿がジェダイのフォースを翳らせた真意はここにあったと言うべきだろう。 ダース・シディアスが誰の目から見てそう見えるように仕組んだが? もはや言うまでもない。

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<<ジェダイの帰還>>

本作のラスト間際でEP4以降、長年秘密とされていた(ジェダイの中で)オビ=ワンとヨーダだけが死後消滅した理由が明かされた。2人はクワイ=ガンが身につけた不死の秘儀を学んでいたのだ。この秘術により、肉体的な死は肉体を昇華させ、魂の永遠を得ることが出来るのだろう。

旧3部作で度々ルークを救うようにオビ=ワンの幻影と声が登場したのもこの秘儀によると理解することができる。また、EP2でアナキンのタスケン・レイダー虐殺(母親の死に対する復讐;ダークサイドへの切っ掛けとなった)をヨーダが感じ取った場面で、アナキンを制するかのようにアナキンの名を呼び続ける声(クワイ=ガンらしき人物の声)がしたのも納得が出来た(あの声はフォースの冥界に生き続けるクワイの声だったのだ!!)。

そこで、疑問なのがEP6のラスト。勝利を祝う反乱軍。ルーク達を見守るオビ=ワンとヨーダの幻影にアナキンも並んで立つ。これは何故か?

アナキンがダース・ベイダーの時に、この術をクワイに習ったはずが無い。まず思い当たるとすれば、本作(EP3)でダース・シディアスが言った、死を逃れるダークサイドの魔力だが、それではあまりにEP6の"Return of the Jedi" 「ジェダイの帰還」というタイトルにはオドロオドロしいだろう。

そこで思い出されるのは、EP4でベイダーを前に剣を収め悟ったように討たれるオビ=ワンの姿、そして、不死に魅せられたアナキンがダークサイドの力を得てダース・ベイダーとなり、やがてはルークの純真さにより目覚め皇帝を打倒するスターウォーズの結末。

最終的に皇帝が滅びたようにアナキンを魅了しダークサイドへと陥れた「不死」の秘術は、もともとシスの暗黒卿には存在し得ず、クワイ=ガンが冥界でその術を習得したのを感じ取ったダース・シディアス(クワイの声をヨーダと同じくシディアスも聞いていたのだろうか?)がアナキンを引き込むべく作りあげた伝説だったのではないだろうか?

つまり、ベイダーに不死の秘術を授けたのは他でもない師匠のオビ=ワンで、ベイダーはその術を記憶したものの(おそらくそれはジェダイに限られた秘儀で)理解できなかった、それを可能とさせたのが父にジェダイの穏やかな心を呼び戻させたルークだったという事なのだろう。

そう、ルークを見守るようにヨーダ、オビ=ワン、アナキンの3人が並び立つEP6のラストこそが、ジェダイがフォースにバランスを取り戻した姿 "Return of the Jedi"だったのである。

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2005年6月27日、記

(評価:★5)

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