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[コメント] バーバー(2001/米)

くだらない日常会話の意味
スパルタのキツネ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







主人公の相棒の床屋さんに限らず、沈黙を恐れる者におしゃべりが多いのは大部分事実だと思う。彼らは敢えて意味の無い会話を繰り返す。しかし、そこには重要な意味がある。一見無意味な会話も、相手の反応を探ることにもなるし、自分の無害さを知ってもらうことにもなり、お互いのおおよその人格(自分にとって無害か有害か)を認識することが出来る。

人は「安心する為に」コミュニケーションをとる社会的動物です。無口なことは美徳だと思います。でも、それは人間の社会的習性から外れることでもあり、心の孤独につながり、時にはよからぬ考えを起こすことにもなるのでしょう。

相棒をおしゃべりと呼び、妻からは「無口なところが好き」と言われる主人公の過ちは、おそらくこんなところから始まっていたんだと思う。

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さて、本作の渋い面構えの主人公演じたビリー・ボブ・ソーントン。またしても彼にやられました。一体、いくつの顔を持っているのでしょうか? どこかしら未来から現実を見たような回想的な視線といい、原題「そこにいない人」を思わせる陽炎のような存在感といい、心ここにあらずの精神状態といい、素晴らしかった。

彼が最後に座ったあの椅子。どこか、髪の毛を切っては捨てていた床屋の椅子を思わせるものがあったが、違うのは自分が座ること。彼に拒絶の姿勢は見られない。魂はもう其処にはないのでしょう。それにしても、こんな形で終わるとは・・・。うーん、虚しい作品です。

(評価:★4)

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