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[コメント] 博奕打ち いのち札(1971/日)

総長賭博』を経て本作で再びコンビを組んだ笠原和夫山下耕作の「きれいごと」の男女の悲恋に不満を口にする。これはこれで充分に名作だよ。でもそんな事があったからこそ全てを破壊する『仁義なき戦い』が生まれたのだろう。
sawa:38

**ネタバレ注意**
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名作として名高い『博奕打ち 総長賭博』を思わせる鶴田と若山のシュチエーションを踏襲した義理と人情の世界観は不変であった。(厳しく言えば進化してないってことか)  しかし本作の主軸は、結ばれてはいけない男女の悲恋ともどかしさが描かれる。これが良かった!何が良かったかって、他のコメテの方々も仰ってるように大楠道代(安田道代)が良い。わざわざ大映から借りてきただけのことはあった。藤純子はこの年に引退したし、桜町弘子では出し得ない色香と風格を併せ持ったのが彼女だったんですね。同じ大映からでも江波杏子じゃ下品過ぎるし・・・

脚本の笠原和夫のインタビューを読むと、彼はかつて男と女の関係にあった鶴田浩二安田道代が姐さんと子分という関係で再会したもどかしさを、もっとドロドロした性的欲望を抑えた描写で描きたかったようで、監督の山下耕作がさらりと(さっぱりと)描いた手法に大いにに不満を持っていたようである。

そりゃそうだろう。5年振りの再会が親分の通夜の席上だったとしても、5年間も服役していた男にとって目の前にいる喪服の女はあまりにもエロ過ぎるだろうに。しかしそこはスター鶴田浩二だ。エロい視線の芝居なんかはさせられはしない。その後も監督は鶴田に清潔な男を演じさせる。

勿論、本作は「東映任侠」の王道をいく「博奕打ち」シリーズだ。ここまで積み上げてきた様式美を踏み外してはいけないのだ。私は純粋に山下監督の様式美に1票を投じる。これはこれで良いのだ。スター鶴田浩二は勃起なんかしちゃいけないのだ。でも安田道代は完全に「濡れてる」芝居をみせていたと思う。だから本作の彼女は評価されてるんだろう。

この主演ふたりの芝居のズレと脚本家と監督のズレに笠原和夫がキレたのが原因で「東映任侠」が終焉のスイッチを押させたかもしれない。そしてその結果笠原和夫が2年後に『仁義なき戦い』で完全に「東映任侠」を破壊させたのならそれもまた面白い。

追加:ラストの「血の海」ですがどこかでそっくりなシーンを見たことがあると思って探しまくったところ、ありました。75年の『日本任侠道・激突篇』で山下監督が同じ演出で使ってました。鈴木清順ばりのモダンテイストで、任侠道の象徴を破壊するなんて、山下監督は彼なりに「東映任侠」の幕引きを試みたんだと察します。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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