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[コメント] 昭和残侠伝 一匹狼(1966/日)

誰もが予測出来るストーリー展開に野暮は言うまい。だが、ソレを知ったうえで観客のカタルシスを最高潮に持っていく演出はやはり上手い。日本人のDNA特性を知り尽くしたような演出だ。
sawa:38

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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歌唱力に難有りの高倉健ではあるが、たった独りでの殴り込みのシーンではやはりどうしても必要なのだろう。親から貰った大事な身体に刺青を彫った男のやるせない心情が詰まっているんだ、あの歌詞には・・・

毎回お決まりのパターンはマンネリと言われても仕方の無い側面はある。だが、プロレスでの入場シーンのテーマソングと同じで、臭いと思われようが、恥ずかしいと思われようが、どうしても必要なのだ。

だが、そのマンネリ感を楽しむ観客のカタルシスを、さらに盛り上げようとする演出が心憎いのだ。嬉しいのだ。

単身殴りこみをかけようとする高倉健、「♪〜唐獅子牡丹〜〜♪」と1番の歌詞が終わると健さんの前に立ち塞がるのが仇敵であるはずの池部良。唄は止まる。その池部が助太刀を申し出る。何も言わない健さんが歩き出すところで再び2番の唄が始まる・・・粋だねー。泣けるね。

盛り上がっていたカタルシスをスパッと止められて、観客は静音状態に戸惑う。まるで自分の心臓の音しか聞こえないような状態の中で交わされる男同士の会話を聞かされた後での2番の唄の始まりは、溜めに溜めた観客のヒロイズムがまるで演歌のコブシのように爆発していく感がある。

「心憎い」演出とはこういう事だろう、我々日本人のDNA特性を知り尽くしたような演出であろう。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ハム[*] ねこすけ

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