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[コメント] 現代やくざ 与太者仁義(1969/日)

三兄弟の末っ子(田村正和)にスポットをあてた描き方は正しい。
sawa:38

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







もはや任侠道が消滅した世界では、渡世の上での「兄弟分」は真に信頼できるものでなく、実際に血の繋がった兄弟ぐらいでしか信じるに値しないのだろう。

長兄(池部良)は、親分子分の杯が血縁よりも優先すべきだと未だに任侠道を信じている。従来の東映任侠映画そのままの男。

次兄(菅原文太)は任侠を否定し、獣のように我が道を往く。この後の東映実録やくざ映画を表している。

そして末っ子(田村正和)はやくざ組織から足を洗いたいチンピラ。

長兄と次兄の葛藤は正に邦画界の転換を表しているようで、東映内部の葛藤すら伝わってくるようである。配役もそれぞれ任侠路線の大スター池部良と後の実録路線の菅原文太が配されていることなど象徴的ですらある。

注目はチンピラの末っ子にスポットをあてたことで、一般市民(観客)からは遠い別次元の存在だった「やくざ」を観客の目線に下げたことにある。

後の『仁義なき戦い』シリーズで特異な存在をしめした桜木健一や小倉一郎のようなヘタレ役は、我々観客に近い存在でリアル感の中心的意義があった。今回の田村の役どころは、そういったリアル感の先駆け的な意味を持っていると思う。

(評価:★3)

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