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[コメント] 丹下左膳 百万両の壷(2004/日)

良い脚本からは良い作品しか生まれない。この忠実なリメイクは自らの作家性を殺してまでも、アノ傑作を現代に伝える事に主眼を置いた伝道師足らんとする姿勢に頭が下がる。
sawa:38

云わずと知れた日本映画の代表作の1作をリメイク。

誰が見たってこんな面白い脚本をリメイクしたいって思うわな。きっとそんな誘惑を邦画関係者は70年もの間、抱き続けてきたに違いない。だけれどもソレはタブー。

名作のリメイクなんか作ったところで、ボロクソに言われるのが常です。けっしてオリジナルを超えるような、否、オリジナルと並ぶような評価はされない。絶対にされない。それが評論の世界。

考えてもみろ。『七人の侍』を当代一のスタッフ・キャストでリメイクしたところで、いったい誰が評価するだろうか?シネスケ内でのハリウッド版『ゴジラ』への洗礼が記憶に新しい。

しかしだ。本作のオリジナルは現代人には「見づらい」白黒だし、フィルムも劣化している。台詞だって聞き取りづらい。だけれども途方もなく面白いのだ。

そんな傑作を現代に「知らせたい」。どうやっても未見の人に「知ってもらいたい」。そして「知らせる」にはどうしたら良いのか?目の覚めるようなシャープなカラー撮影で、役者も巧い豊川を起用し・・・

そして今回の肝が、忠実過ぎるまでのオリジナルのトレースだったのではないか?

ありがちな新解釈やら新手法を用いることをせず、馬鹿正直なほどに忠実にトレースされている。豊川の喋り方まで大河内伝次郎にそっくりじゃぁないか!つまりコレはリメイクというよりは「撮り直し」を意識したと解釈したい。

通常ならば現代の製作陣なりの作家性やらオリジナリティを打ち出したいところなのだろうが、それをあえて抑えて「撮り直し」に徹した姿勢と受け止めるならば、彼等は邦画遺産の伝道師として賞賛したい。

これをきっかけにして、フィルムセンターやら古いレンタルビデオ屋でオリジナルを探す輩が出てくることだろう。きっと製作者や監督が望んでいたのは、そういうことだったんじゃないだろうか?

PS.それはそれとして、本作も実に良かった。やはり、良い脚本からは良い作品しか生まれないのだ。つまらなくなる要素が無い。ただ、★を満点にしなかったのは、やはりオリジナルの『丹下左膳餘話 百萬両の壷』対して敬意を表させて戴いただけです。

(評価:★4)

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