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[コメント] 血と骨(2004/日)

ここに描破された映画史上稀にみる「心の暴力」に映画的なカタルシスは無い。だがそれを凝視し続けさせる力がある。ここにクレジットされた役者たち全員の「代表作」として記録され続ける資格を持った作品となろう。
sawa:38

ここにクレジットされた役者たちの演技力は、おそらく各種のサイトの評論や、ここのコメント群でも詳細に語られていくことだろう。(不満を言えば、ビートたけしの迫真の演技が晩年の老人役の際に、それまでの「俳優ビートたけし」から「芸人ビートたけし」になってしまっていたのが残念であったのだが・・・)

で、私なりにとても気に入ったのが、脇役とエキストラの「芝居」。スクリーンの端っこにいる「その他大勢」の脇役たちまでが実に良く「芝居」をしていて、監督の「こだわり」が良く分かる。そしてそれは「通行人」である名も無いエキストラたちにも向けられているのだ。

例えば、ビートたけしが女房の葬儀場へ向かうシーン。被写体であるビートたけしの背後に酒屋から出てくる客A。客Aは無言で自転車に向かい、静かにフレームアウトする。この名も無い客Aは、主演俳優と完全に被っており通常は邪魔な「絵」である。なのにわざわざココにエキストラを使う監督の「こだわり」が心憎い。

そう、銭湯でのシーンでのエキストラたちも忘れ難い。身動きも出来ずに怯える客B・C・Dは全裸の熱演である。

極めつけはファーストシーンの船上の人々だ。群衆シーンでありながら、各人が新天地での「期待・希望・高揚」を見事に表している。これはまさにプロの仕事。バイト気分のエキストラに出来る仕事ではありません。

そう、この映画。主演級の俳優は勿論、脇からエキストラに至るまで「プロの仕事」をしています。否、言葉を換えれば、監督がソレを要求し、ソレを実現させたのでしょうか。

実に凄い映画を見せつけられたと思います。これほど監督の存在感がある映画は久しぶりに・・・と言ったら言い過ぎでしょうか・・・?

(評価:★5)

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