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[コメント] ローレライ(2005/日)

父が中国の港に寄港していた時、翌朝、隣に巨大な伊号潜水艦が浮上していて驚いたという。
sawa:38

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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もちろん、伊号500級は501潜から506潜までの6隻しか存在しない。6隻ともドイツもしくはイタリアの造船所で竣工したものだ。映画に登場する伊507潜は架空の艦である。

父が遭遇した艦は、航空機「晴嵐」を格納した世界でも類を見ない潜水空母(伊号400級)である。対する父が乗艦していたのは駆逐艦より小さな海防艦だった。

若き父はその巨大潜水艦を見て何を思ったのだろう。期待と羨望と威圧。この船なら日本を守ってくれる。そんな祈りが期待出来そうな存在感を持っていたという。

祖国の未来を守るという映画のコピーには涙が出る。このあまりにも荒唐無稽な漫画映画と割り切って鑑賞しても、それでも涙が出る。そう、「宇宙戦艦ヤマト」に血沸き肉踊った感覚と似ている。

3発目の原子爆弾という日本人には耐えられない設定を据えられたからには、それが荒唐無稽の漫画映画であろうとも私は感情移入した。しかし、途中から混乱しだす。米国との取引=東京への原爆投下という理屈が理解しかねたのだ。首都東京の切腹という理論は原作を読めば理解可能なのかも知れないが、映画の中では支離滅裂なモノとしか描き切れていない。

もっと単純に、原爆投下を中止する見返りとしてのローレライシステムの供与。というように簡潔にしても良かったのではないか。多くを詰め込もうとして、その結果骨子が消化不良になってしまっている。

原爆という日本人には絶対的なアレルギーを振りかざす朝倉大佐には誰も共鳴できない。彼は本作では完全に狂人か悪である。原作はどうか知らないが、映画ではそうとしか読み取れない。だから艦内での対立も説得力に欠け、映画はぼやけていく。

単に潜水艦映画を撮りたかったのならば尚更である。余計な(こ難しい)理屈をこねくりまわすよりも、簡素にストーリーを絞りきるべきだった。残念である。

追記、1、新鮮な空気が何よりも大事な潜水艦乗りにあって、自由にデッキへ上がり、なおかつ二人っきりで青春するカップルにとっても違和感を感じた。

追記、2、円谷でさえも「海」のシーンは苦労した。ミニチュアでは巧く「波」が表現出来なかった。それをこのCGは巧くやり遂げてしまった。嗚呼、なんか円谷の時代は完全に終わってしまったのかなぁとも感じた。

(評価:★3)

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