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[コメント] 日本沈没(2006/日)

思い入れが強い作品だけに、まったく納得出来ないんだ。「人」なんか描かなくていいんだ本作は・・・30年間、私が構想を練っていた『続・日本沈没
sawa:38

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







本作は大地真央主演の大局的な政治ドラマに徹すれば良かったんだ。

何故?

日本沈没』のテーマは「日本民族」という壮大なものであるはずだ。映画という作品上、個であるドラマは必須なのは理解するが、恋愛や特攻隊まがいの陳腐なドラマを採り上げるのならば、大地真央主演の大局的なドラマの方が見たかった。

さらに言えば私は仮想ドキュメンタリー風の作品に仕上げて欲しかった。鑑賞後1時間が経った今、思い起こすシーンは「スーパーでの暴徒・市場の暴落・空港でのパニック・海外での排斥デモ・・・」どれも皆短いカットの挿入でしかなかったが、未曾有の大惨事に比べればどうでも良い位些細なエピソードである。だが、逆に末端の一市民にとっては極めて身近な「想像出来得る」エピソードなのである。だからこそ恐ろしさが、否、リアルさが伝わってきた。

もう一度言う。テーマは「日本民族」という壮大なものであるはずだ。であるならばドラマ部分が必要ならば、序盤に提案された「座して死を待つ」という選択肢は大変興味深く、他人を蹴落としてでも避難したい者との対比したドラマでも良かったと思う。災害に突然殺されるのではなく、生きるか死ぬかを自ら選択するという残酷な葛藤こそ「日本民族」らしさが描けたのではないか?中途半端な人間ドラマなら不必要だ。名作『世界大戦争』でフランキー堺が演じた一市民のリアルな目線は本作には無い。

そしてさらに本当に必要なのは、祖国日本を失った「難民日本人」を描いてこそ「日本民族」のアイデンティティが描けられるのではなかろうか?本筋は祖国を失ってからなのだ。故に本作『日本沈没』は起承転結の「起」であるべきで序章にしか過ぎない作品で良いのである。だから肝心なのは『続・日本沈没』なのである。

20数年前の正月の新聞広告に『続・日本沈没』の企画があるのをみて期待に胸が高鳴った記憶がある。結局は企画倒れに終わったが、亡国の民となって世界中を流浪する日本人。日本人にとって非常に遠く馴染み難い「中東問題」「ユダヤ人」といった現在でも熱い問題が我が身に振りかかる恐ろしさよ・・

「金儲けの得意なユダヤ人」:「金儲けの得意な日本人」。私たち日本民族は世界から排斥され疎まれ蔑まされる。太平洋戦争の残滓としてのアジア外交、またヨーロッパ先進国は経済力を失ったただの黄色人種をどう扱うか?

やはり石坂浩二扮する首相は中国まで到着すべきだった。大局的な政治ドラマにして、石坂浩二が土下座外交をする様を描くべきだったのだ。

本作は序章であるべき作品だと思う。ならば本作が最も描かなくてはならないシーンは上記のシーンだったはずだ。本作のテーマが壮大かつ奥が深い「民族」である以上、歴史と政治と文化を描くべきであり、他愛のない恋愛やら特攻隊もどきのヒーロー話に茶化しては断じてならないと思う。ましてやあのようなハッピーエンド(?)のような安直なラストは許せないのです。

「日本沈没・第二部」が発刊された。明日、本屋へ行き購入するつもりです。ただ、何か期待はずれのような予感がします。谷甲州氏だそうですが、せめて国際情勢を幾度も的確に予想し的中させてきた大石英治氏ならばと・・・いやいや、堺谷太一氏ぐらいに書いて欲しかったとも思います。

(評価:★4)

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