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[コメント] ゆれる(2006/日)

冒頭10分でこの監督の細かいカット割りに嬉しさがこみ上げる(やや教科書的過ぎるが・・)。そしてやはり香川照之だ!彼は恐らくどの作品でも監督の期待値を上回る芝居をする。だから皆「彼」の作品に染め上がってしまうのだろう。
sawa:38

冒頭の開け放たれた冷蔵庫。ガソリンスタンドから去る車の窓ガラスに触れられない指。バックミラーに映る女の顔。倒れたお銚子から零れる酒が濡らすズボン。

この監督の細かい演出が冒頭の10分間だけでも冴えわたっている。役者は写さずともその人物の衝動がビンビン伝わってくるではないか。ややもすれば、あまりにも教科書的な演出方法にしか過ぎないが、それが嫌らしくなる一歩手前で上手に抑えられている。

嗚呼、俺も映画撮るならこんな技使ってみたいよなぁ!ってな小技が各所にビシバシ使われている。撮影スタッフに細かい注文を色々と(もしくは粘り強く説得)つけたんだろうなぁと思われます。きっと現場を完全に(上手に)掌握してたんだろうなぁ。完全に監督の映画ですよコレは。

そして香川照之です。彼が登場すると彼が「場」を支配します。名優の階段を昇りかけているオダギリジョーも彼の前では完全に木っ端微塵に粉砕されます。個人的に現在の日本映画界においてNo,1の役者は彼なのです。ちなみにNo,2は大滝秀治ですが・・

この作品が西川美和のモノなのか、香川照之のモノなのかはわかりませんが、監督と役者の両方がとても良い仕事をこなした結果が本作なのでしょう。ただ、後半の法廷シーンでの香川照之は少々「やり過ぎた」感もあるのですが、まぁ、それも含めて彼の色で見事に染め上がってしまったようです。

とにもかくにも映画の為のオリジナル脚本ということも相まって、実に映画らしい映画を鑑賞させていただいたという気がします。

(評価:★5)

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