[コメント] フラガール(2006/日)
この作品がたったの120分だった事実に驚く。何だかとても濃い充実した時間を堪能出来た。
メインとなるストーリーには明瞭なる起承転結が用意され、揺るぐことなく120分間突っ走り、作品に対する「深み」は充分であった。加えて見事だったのがサブエピソードの数々である。これらは脇を固める人々を深く描き込む事で作品の「味わい」を拡げながら決してメインの邪魔をすることなく全てプラスに作用させていた。
徳永えりが夕張へ去って行くまでが丁度折り返しの60分。実にたったの60分とはいえ、ここまでで既に未完ではあるがひとつの物語として完成の域にあるのに驚かされる。
鑑賞中に時計を見てアト半分かと思う。作品は大きな転換点を越えて、通常ならば中弛みに入る頃合だからだ。だが、本作は前半にも増してテンポを上げていく。そう、本作はアクセルを緩めることなく起承転結の「転」へと突っ込んでいく。
脇を固める役者たちには、きちんと「その場」を与え、役者たちはきちんと熱演でそれをこなす。そうやって数々のサブエピソードが完成され、メインに膨らみを付けていった。本作の魅力は脇の役が実に魅力的だったという事である。
映画の王道を行くような正統派の作品作りはベタで批評のし甲斐もあるのだろうが、実にきっちりとした正統派をここまで上手に作られたらグウの音も出ない。変化球の作品や観客の芸術センスに委ねるような作品が「一流」とされるなら本作は「二流」の娯楽映画。
だが邦画の復活が本作のような娯楽作品から始まったからには、今後の邦画界のハードルはより上げられる。いや、上がらなくてはならない。私は邦画ファンである。今後のよりレベルアップした娯楽作品の数々が楽しみでしょうがない。
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