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[コメント] 手紙(2006/日)

ラストの3分間、玉山鉄二の芝居力に度肝を抜かれる。だが、いち早く正気を取り戻さねばならない。席を立つ。幕が下り、劇場が明るくなる前に。
sawa:38

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







レイトショーが終わり、深夜の国道を独り車を飛ばし家路についた。車内で色々な考えが想い浮かぶ。

私は役者ではないが、私がもし本作の役者ならばどんな芝居を演じられたのだろうか?被害者が弟と兄を許そうとするシーン。「もう終わりにしよう・・」。私が被害者ならどんな絶妙な「間」を持って台詞を喋るのだろう。もっと搾り出すような感じが良いのだろうか。

慰問漫才の途中、相方がおもわず「こいつの兄貴は・・・」。私が相方ならどんな表情で弟の表情を見るべきか?

そして慰問会場で手を合わせる玉山鉄二

こればかりはとてもじゃないが真似出来なかった。私にとっては『百獣戦隊ガオレンジャー』出身のガオシルバーのイケ面俳優としてのイメージしかなかったが、よくぞここまで素晴らしい俳優になったのか感慨著しい。

これまで私的に演技を超えた演技として一生忘れられないのが『キリングフィールド』のハイン・S・ニョールが手を合わせ命乞いするシーンであるが、くしくも今度も玉山鉄二が手を合わせるシーンであった。

あの「目線」。後ろめたさと困惑と哀願と喜び。いくつもの異なる感情が一気に噴出する感情表現の巧さ。ただ嗚咽するのではない。私たちは2時間もの長丁場に付き合わされて、彼の置かれた状況が様々に変化してきたことを知っている。だからこそ、彼の嗚咽から私たちはいくつもの異なる感情を見つける事が出来る。

本作すべてを賛辞の対象とするには無理がある。しかし、ラスト3分。この3分は金を払って見る価値のある芝居であったと思う。そしてけっしてひとつの解答が出せない大きなテーマを、ラスト3分でさらに加速度をつけて観客に突きつける事が出来えた芝居であった。

大変満足であった。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (9 人)Shrewd Fellow まー[*] たろ[*] 大魔人[*] まゆ ムク エリ-777[*] セント[*] 水那岐[*]

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