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[コメント] トウキョウソナタ(2008/日=オランダ=香港)

役所広司のスケジュールが3日空いたという理由だけで脚本が暴走したという「遊び」。そんな部分に無理やり映画的解釈を求めようとする評論家が哀しい。外国の評価はともかく、正直なところバランスが悪過ぎでしょう。
sawa:38

今の私にはリアル過ぎて目を背けた前半の恐怖。 香川照之津田寛治に忍び寄る絶望と恐怖は、今の日本ではあまりにも日常であり、私も身をもってその絶望の中にいる。

本当に目を背けたくなった。優先順位が間違ってるんじゃないかと若い人は笑うかもしれないが、世間的な見栄や男・父としての威厳・過去のプライド・・・・・こういったモノは最優先にならざるを得ないのだ。だってこれを無くしたら「今までの全て」を失うことになるのだ。馬鹿らしいかなぁ?

そんなリアルな恐怖を前半は冷酷に描いていった。嫌いな映画だが秀逸だと思った。

しかし、映画は役所広司の登場から変調し、暴走とも言える娯楽映画的なリズムに突入していった。あぁ、こういう映画だったのかと思っていたのだが、後日監督のインタビューにて、黒沢清映画の常連の役所広司のスケジュールが3日空いたということで急遽脚本を書き換えて強盗の役を当てて出番を大幅に増やしたという。こんな話を聞かされて皆さんは納得出来ますか?

脚本ってそんなに簡単に書き換えられる程度のモノなんだろうか?映画全体の意味合いさえ変調させる程のドラマを「ちょっと遊びたくなった」と挿入する監督。とても残念な気がしてなりません。

しかも前半のリアルさは影を潜め、映画的な夢物語が拡がっていった後半。

三ヶ月分の給食費=15,000円を躊躇なく払える状況に、嗚呼この家庭はまだまだ追い詰められていないんだ。トイレで拾った大金を返却しても夕飯にオカズがまだ付くんだ。極めつけは天才児の出現と私立の中学受験にはあきれかえってしまった。

そうこれは映画なんだから「夢物語」。たかが・・・やっぱり・・・

前半の緊張感溢れる恐怖は黒沢清のどのホラーよりも怖かったのに、なんとも気の抜けた映画に成り下がってしまったものである。残念。

PS,現在の役者でNo,1であろう香川照之が本領を発揮する場もなく終わった。勿体無い使われ方をしたものです・・・・・残念。

(評価:★3)

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