[コメント] パーフェクト・ワールド(1993/米)
この男は「父親」に幻滅した後、たった一枚の絵葉書によって「父親」の幻影を作り上げ、しゃにむにそれを追い求めた。そう、この作品にはひとりとして「父親」は出てこない。父権不在のアメリカの病巣が見える。
**ネタバレ注意**
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子供の人権擁護の為ならば銃で脅迫も辞さず。
自由を剥奪されている「エホバの証人」の子供に「アメリカ人の権利」(ローラーコースターに乗り、綿菓子を食べる)を諭し、抑圧からの解放を与える。
これらもまた不遜なアメリカ人への揶揄なのか。
この男は「父親」に幻滅した後、たった一枚の絵葉書によって「父親」の幻影を作り上げ、しゃにむにそれを追い求めた。
本作で唯一、常識ある正統派のアメリカ人を演じているのがクリント・イーストウッドだった。本来なら彼が正当なる「父親」たる役を演じるはずだろう。しかし彼は脇に徹し、なおかつラストで悲劇を食い止める事が出来なかった。
イーストウッドは「父親」不在で迷走する社会に警鐘を鳴らしはしたが、だからといってそれを頭ごなしに楔を打とうともせず、食い止める事が出来なかった。彼はJ・ウェインのように現実に立ちはだかるのでなく、苦みばしった視線で流れ行く現実を苦々しく一瞥するだけなのだ。
しかし、そういった一歩退いた感覚が映画監督として一種の叙情的な雰囲気を醸し出すのに一役かっている。
PS,知事から派遣されたという設定のローラ・ダーンという女性キャラはいったい必要だったのだろうか?まさしく疑問。
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