コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 連合艦隊(1981/日)

「英霊論」か「犬死に論」かはともかく、我々は皆、後世を託された生き残り組の子孫であるという事実。その運命の分岐点を知る為のきっかけ程度にはなるし、そうしなければならない。
sawa:38

我々は太平洋の各地の海底に多くの先祖が今もって眠っている事を知っている。その範囲は狭い日本の国土から考えると、想像だに出来ない広大な範囲である事に驚く。とんでもなく遠い地まで、とんでもない辺境の地まで。

歴史や戦史に興味を持った者ならば、太平洋の様々な地で行われた多くの海戦のひとつひとつに幾多のドラマがあった事を知っている。誤解を恐れずに言えば、戦史的なドラマはたったひとつの誤認・誤解・ミスによって戦局がそして歴史までもが大きく変わり得るドラマ性があり「大変面白い」

だが本作は太平洋戦域においての連合艦隊の主要作戦を網羅しようという暴挙に挑んだ為、底の浅いエピソードの羅列にしか過ぎず、全体を描いているようでいてその実何も描けてはいなかった。ドキュメンタリーフィルムを繋ぎ合わせ、その合間に役者による演技を付けたしたかのようなドラマ性の無さは致命的だった。

しかもその特撮はまるで先祖帰りしたかのような幼稚なものだった。特に前半部で見応えがあったのは円谷英二の旧作から借用した「ハワイの渓谷を縫うように飛行する」シーンぐらいではなかろうか。

話は戻る。前述した「大変面白い」という言葉は語弊がある。そこには多くの「死」があるからだ。日本の戦争を題材にした映画は、それこそ多くの死を描かなければならない。よって、それは「グランドホテル形式」で多くの登場人物を並行して描く運命に縛られる。

しかも本作は永島敏行金田賢一の兄弟、財津一郎中井貴一の親子のふたつの家庭・一兵士のドラマを主眼に据えながらも、軍令部や艦隊クラスのドラマまで盛り込んだが為、物理的にも各々のエピソードは細切れの底の浅い描写に終始した。

故に上記のふたつの家族が、戦艦大和という舞台に集約される後半においてやっと人間ドラマは本領を発揮しだすのだ。だが、それは遅すぎた。中途半端な人物描写しかされなかった人物たちのドラマは説得力を欠く。それよりも単純な脇役であるなべおさみや名も知れぬ少年特攻兵のインパクトの方が大きいのだ。

<まとめ>:幾多の海戦で死んでいった兵士たちには、その数とその家族の数だけの悲劇のドラマがあったはずだ。こんな事言ってもしょうがないのだけど、その膨大な数の悲劇をあのように「とっても簡単」に細切れのエピソードで描いてしまう事に「抵抗感」があるのです。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] 水那岐[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。