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[コメント] ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐(1960/日)

飛行機野郎円谷英二ならではの渓谷を低空飛行する艦上攻撃機のスペシャルショット。『ラドン』と並び日本の特撮陣の職人魂が伝わる。ただ、艦船シーンは未だ極められてはいない。
sawa:38

国家の命運を左右するターニングポイントというものが、いくつか存在した。その中でもミッドウェイ海戦はよく知られている。

利根からの索敵機が事故で発艦が遅れなかったら?

後方にいた連合艦隊司令部は敵機動部隊接近の情報を掴んでいた。無線封鎖の禁を犯しても南雲艦隊に知らせていたら?

等など、不謹慎だが「if」の世界に遊ぶには格好の分岐点が存在する。

そこから始まるまさかの悲劇の連鎖。雷装から爆装へそしてまた雷装へと次々と変更される作戦命令と近づく敵機動部隊。

この作品では上記の「if」は描かなかった。言うまでも無くこの数分間、十数分間が後の日本史を変えたといっても過言ではない。この海戦が世界の軍事史にもたらした教訓は「情報」と「決断」である。

このターニングポイントの十数分間を描くだけでも重厚なドラマがある。硬直化した海軍の人事によって、航空機には明るくないにも関わらず機動艦隊の指揮を執る南雲と実質的な指揮を執る源田実航空参謀。

彼等の個々人の分析・判断が艦隊、ひいては国家の命運までをも左右したのである。ここを「じっくり」描かなくてはいったい何を描くのだ?

結果的に彼等の決断は失敗し、艦隊も国家も瓦解の道を歩んでいった。我々は彼等の失敗に何を学ぶのか?この大いなる敗戦からは学ぶ事が多いはずである。

「今」を生きていると、歴史のターニングポイントがどこにあるのかは分からない。「今」新聞紙上を賑わしている事件や報道が「それ」かも知れないのだ。もうこんな大きな失敗は出来ないのだから、この失敗は大事に、そして正直に分析しなければならない。

特撮は良い。だが、特撮に頼らない日本製戦争ドラマが見てみたい。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] 荒馬大介[*]

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