コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 有りがたうさん(1936/日)

これはグランドホテル形式のロードムービーというのだろうか。 こんな素敵な映画を「ありがとー」と言いたくなる。
TOMIMORI

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







たいていの大人はバスから遠ざかるという絵は、ともすれば単調になりがちだが、 子供はバスを追い抜いて画面から見切れてしまうという変化をつけているのが面白い。 しかもその子供がいつの間にかバスの後ろにちゃっかり座っているというオチもさりげなくてよかった。

その後バスが小休止した時に、その子供は石を投げているのだが、 トンネル前の小休止では大人がみな一斉に石を投げ始めるというオチもなかなか緻密な構成だ。 子供に影響された大人という図であろうか。この作品でも子供の扱い方に清水監督らしさが垣間見られる。

桑野通子だが、母娘のどんよりとした空気を煙草の煙で吹き飛ばしそうなぐらい勝気な性格が極細眉毛によく表れており、 ヒゲ親父のどこが気に入らないのか執拗にイジワルするのがワケわからなくて面白い。 どうやらありがとうさんに気があるようだが、その性格が災いして相手にしてもらえない様子。 そしてこのちょっとしたロマンスは売られる娘さんをバックミラー越しにチラ見する上原謙という図で終止するのだが、 このバックミラーを使った演出のなんとお洒落なことだろう。 バックミラーは『タクシードライバー』に、乗用車との抜きつ抜かれつは『激突!』に通ずるなどと言ったら大袈裟だろうか。

小津をして"天才"と言わしめた理由がよくわかる作品だと思う。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)煽尼采[*] ジェリー[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。