[コメント] 秒速5センチメートル(2007/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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前作『雲のむこう、約束の場所』で物語を書こうとして失敗してしまった轍を踏まえて、短編連作で勝負した本作。『ほしのこえ』に近く、物語を断片的に語り、終盤まで興味を保つ事に成功しています。但し、物語の核心には触れず。第三話「秒速5センチメートル」パートでは山崎まさよしの歌のビデオクリップでお茶を濁してしましました。…この物語、核心に驚きがなければ、100人中80人くらいはこのくらいの恋愛は経験してるよって言うようなあたりまえの展開ではないか?…と、ちょっと思ってしまった。
でも三点なのは、あいかわらずの背景の美しさと、編集の切れの良さ。つまりシナリオさえしっかりすれば傑作を作れるという事ですよね。そう言う意味でも「また逃げたな新海誠…」でも「逃げ切れてはいない」気がするので、チャンスは「One more」なのかもしれない…。
で、何が語られていない核心かというと、主人公達である初恋の二人が別れた訳、主人公が孤独な訳、別れた後も主人公が彼女を想い続けている訳。 これが終盤まで語られないので、興味は引っ張れるんだけど…結局語られない。実ヒロイン死んでました…みたいなエピローグでも良かったんだけど、しっかり生きてて結婚しているし。
…まぁ死んでるのもありきたりですが。
で、私の考える「秒速5センチメートル」の改案。
主人公の初恋は同性愛。二人は親の転勤によって引き裂かれる。その後、主人公達は親によって連絡を取り合う事も禁じられる。成長した主人公は初恋が忘れられず、孤独な人生を歩む。女性とつきあってみたりもするが、上手くいかない。東京の街でずっと彼の面影を探し続けている。
この設定を第三話「秒速5センチメートル」パートで明らかにすれば、主人公の過剰なまでの孤独感や思いを断ち切れない訳、初恋後登場する女性達と上手くいかない訳(「1000回メールのやりとりをしたのに、距離は1センチしか縮まらなかった」)等が全て納得いくのに…とか思いました。
『バッド・エデュケーション』『ブロークバック・マウンテン』の様に同性愛者の恋と孤独を上手く描いた傑作になった様な気がするんですけどねぇ。
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