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[コメント] HINOKIO ヒノキオ(2005/日)

不完全な名作。場面場面であと一歩足りないと感じる、本当に惜しい映画。
テトラ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







私はこの映画は大好きで、5点をつけたい気持ちだけど、いろいろ問題があるので減点せざるを得なかった。願わくば、問題点を解決して完全版を制作してほしいです。

宇宙が舞台の壮大なSFとかじゃなく、日常に一体のロボットが存在するという設定上、違和感があってはならないロボットの映像は完璧でしょう。目の肥えた人にはどう映るかわからないが、映画を見ている時点でロボットに関しては全く特撮というものを意識せずに見られたので素晴らしい出来だったのだと思います。これ以上求めるものもないです。 設定、ストーリの大筋、キャラクターは、全て良かったと思いますし、なにより制作者の優しい気持ちと情熱が感じられて良かった。しかし、映画の中での表現が上手く出来てるかというと、そこに疑問がいくつか生じます。以下、問題だと思った点を記します。

海に落ちたジュンを助けに、水に弱いのに飛び込んだHINOKIOがどうやって助けられたのか。どうしてジュンは無事だったのか。場面転換で二人とも水から上がっていたのでは説明不足。「飛び込んだ」という行為自体が重要なため、はしょったのかもしれないが、あまりに不自然。

万引きのシーンですが、箱ごと堂々と運び出すというのは先日問題になった某タレントの話と同じ。子供も見ると考えて、そのまますんなり手に入ってしまっていいのだろうか。後でばれてお店の人に捕まるなどのフォローがあったほうがいいかも。

スミレがジュンに憧れのような感情を抱いていると思われますが、表現上、レズに見える。教室でジュンの笛をくわえるシーンなんかいらないと思う。

HINOKIOを忌み嫌ってたスミレが、煙突に登るジュンの行動の意味をどこで知って、どういうつもりで手助けに行ったのか。単純にジュンの手伝いをしただけなのか、サトルを助けようとしたのか。笛の意味も知らないはずだし。

なにより問題なのは、ラストです。HINOKIOを自ら破壊し、感覚フィードバックによって昏睡状態に陥ったサトルが煉獄で母に会い、母と父の本当の気持ちを知り、自分が勘違いしてたことに気づき意識を取り戻しますが、その裏で命がけで煙突に登ったジュンの役割はなんだったんでしょう。意味があったのかもしれませんが、映画を見る限りではわかりません。それに、いくつかのゲームと現実のリンクっぽい現象を聞いただけであの行動は乱暴過ぎるような気もします。 さらに、高い煙突のてっぺんから落ちたジュンがクッションの上に落ちたとはいえ、ほぼ無傷だったことも、偶然で片付けてしまっている。そういうところはリアルにしないと全てがご都合主義の絵空事に見えてしまう。

様々な疑問に、ノベライズ小説が答えてくれてますが、作家は映画そのままでは小説という性質上うまく書けないため、独断で一部を変更したと書いてありました。後に監督に見せて承認を頂いたとのことですので、どこまでが作家の想像で、どこまでが監督の構想だったのかは不明です。

と、いろいろと問題点がありますが、それでもこの映画には凄く心を揺さぶられ、惹きつけられてしまった。主人公の境遇に、わずかながら自分と共通する部分があったことと、ジュンという人間の魅力、それを演じるにはこの人しかいないだろうと思わせる多部未華子の存在感。そして、映画を作った人々の愛情と熱意の賜物でしょう。多くの人に見てもらいたい映画です。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)死ぬまでシネマ[*] [*] 早秀[*] tkcrows[*] トシ[*]

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