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[コメント] A.I.(2001/米)

スピルバーグは本作でも性善説を貫いた。
アルシュ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







◆ラスト2000年後のあのニョロっとしたものは観るものに委ねられているそうですが、私はロボットと判断しました。 自己改造を進めていったロボットが、生きた人間の記憶を甦らせるためプロジェクトを組んでいたと・・・。これはスピルバーグが性善説の人だからこその展開です。 そして、デイビッドは最高に幸福な1日を永遠としてもらう事で眠りにつきます。これはハッピーエンドと捉えます。

◆さて、キューブリックを信奉している方が、この作品を観るにつけここぞとばかりにスピルバーグ批判をしています。キューブリックの世界をスピルバーグが壊したと。

脚本はスピルバーグだとしても、物語の骨格はラストを含めてキューブリックです。加えて未来像もキューブリックの残した絵コンテがあり、それを忠実に再現しようとの事。

キューブリックの考えでおとぎ話「ピノキオ」を登場させ、「ブルーフェアリー」を求めていきます。これを否定するなら、キューブリックを否定する事になりますね。

キューブリックが存命中に自分がプロデュースし、監督をスピルバーグに譲る約束を交わしたとあります。そこで「なぜ自分で監督しないんだ、スタンリー?」と問うと、キューブリックはただ「なぜって、この映画は私よりも君の感性に近いと思ったからさ」と答えたといいます。故にラストも含めてキューブリックが作ったとしても、同じ結末だったのではないでしょうか?(この辺はAIのオフィシャルHPの作品情報で解ります。インタビューでもキューブリックの90ページからなる企画書を元に脚本を書いたと答えています。)

ちなみに、監督を譲ったもうひとつの大きな理由が、自分が撮ると1年かかる。スピルバーグなら3ヶ月。子役の1年の成長は大きいからというもの。

◆実はキューブリックの考えるラストは映画の終わり方とは別にもう一案用意されていた。母親のモニカが目の前で消滅していくというバッドエンド。スピルバーグだからこそ、用意されたハッピーエンドを選んだ訳です。 常に性善説を貫き通す映画人としての姿勢が伺えます。

(評価:★5)

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