[コメント] ダーウィンの悪夢(2004/オーストリア=ベルギー=仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ドキュメンタリーに徹するということが、事実を客観的に伝え、その伝え手の立場は明らかにしない、という立場を取ろうとしているのであれば、それは詭弁である。なぜならば、そこに映し出されている映像は、そこに映し出されている映像の集合体をひとつのメッセージとして観客に見せようとしている監督の意図そのものだからだ。
そして、そこに経済的、或いは肉体的な暴力によって蹂躙される弱者が存在することが確からしいとしても、そのことを明らかにすることによって、監督は何をしたいのか。ナイルパーチの先進国への輸出をやめさせたいわけでは、多分ないだろう。そしてアフリカへの武器の密輸を暴露することで、武器の密輸を止めたいのだとすれば、その武器が運ばれていく先でどのような戦争状態が存在しているのかを明らかにしなければならない。監督にしてみればそれは自明のことなのかもしれないが、何しろほとんどの聴衆にとっては、地球上のどこにウガンダがあるのかさえ分からないのだから。
ちなみにこの映画を見ることで、ナイルパーチ(スズキ)を積極的に食べたくなくなったことは確かであるが、ではブロイラーや養豚場で育てられた豚を食べないかというとそんなこともないのであって、こうした「世の中の実態」を暴露されたことで気分を害したとしても、実際の行動を変えるところまでには至らないと個人的には感じる。多くの人間は、食に関して驚くべき鈍感さをほとんど常に発揮している。(H19.12.25)
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