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[コメント] アメリカン・サイコ(2000/米)

男が一人シャワーを浴びる。そのシーンのメッセージ性において、『ガタカ』に遠く及ばない(当たり前だが)。しっかし、→
むらってぃ大使

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ギャグ映画としてみると、かなり秀逸なセンスをしている。

んが、90年前後?のNYの金を稼ぎまくっている若者達の精神的な荒廃は今も多分変わっていないどころか、東京でも外資系の金融機関なんかで若くして荒稼ぎしまくっている、ビジュアル的にも悪くない高学歴のヤッピーもどきが大量発生し、同じような社会状況になっているのではないか。最近は一転して激しいリストラが開始されているようだが、それでも生き残っている人間はまだまだたくさんいます。

ましてや不景気の中では一般的に社会全体が地盤沈下する一方で金持ちは一層金持ちになるのが通例であり、失業率が過去最高に近い水準で推移している一方、広尾や青山あたりのオープンカフェやクラブではフェラーリやポルシェに乗った20代の若輩者がモデル(時にはJJの読者モデルの場合もあり)を連れてステイタス自慢の夜を過ごしており、名刺交換の時には会社の格で一喜一憂している状況はこの映画と全く変わらない。

関西に旅行に行った時にも、芦屋ではBMWがカローラ状態で走っており、所得の地域格差の甚だしさを痛感した。ましてや関西であれば、親の代やその親の代から殆ど働く必要のない家だってたくさんあるに違いない。

僕自身はそのこと自体が悪であるというほど純粋ではないし、彼らにしてみれば彼らなりに努力し、彼らなりの苦労やストレスの中で仕事しているわけだから、文句を言う筋合いもない。

その一方で、彼らを気の毒に思うことというのは、この映画の中の状況と同じく、異常な状況を異常であると心のどこかで認識しつつも、誰もそこから救ってくれはしない、という点だ。なぜなら、そういう状況のもとでも心の平衡を保っている素晴らしい人間も僕は何人も知っているし、要は彼らのある意味閉じた世界の中で、彼らにとっての常識と、彼ら以外の人間にとっての常識が著しく乖離していることに対してどのように折り合いをつけることができるか、というのは個人個人の精神的な強さの問題だからだ。

そして、世間との共通言語である「金」、収入という点において彼らは世間一般水準を遥かに越えた収入を手にしている。それが自分の行使し得る力ではあっても、自分がその行使する力に対して心の平衡を保ち得るかということは全く別の問題だ。だからこそ、金は怖いんでしょう。

(2002.4.11) (2002.5.7全面改訂)

(評価:★3)

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