原作小説は未読だけれど、映画化にあたってはテンポの良さを優先したのだろう。おそらくはそのために、全体のバランスからするとディテールに欠け、描写不足と思えるシーンやエピソードもある。

具体的には、たとえば炎天下で延々と続いてうんざりとする苦労のはずの穴堀りはあっと言う間で何だかみんなでワイワイと楽しそうだし、マダム・ゼローニは何の禍々しさもなく一瞬の笑顔しか印象に残らないし、クライマックスの山登りの苦労もスルスルとした描写になっている、などなど。この辺りの描写に深みがあれば、もっと記憶にも残る作品になる気がする。

キャストでは、ジョン・ヴォイトのミスター・サーは最高だけど、シガーニー・ウィーバーの所長はちょっとインパクトに欠ける。パトリシア・アークェットは、先生のときよりも、後になってからの方が急に生き生きとする。

そうしたところで、いまいちコクに欠けて喰い足りないところはあるけれど、まあ、ビールとはまた別の美味しさがある発泡酒ってことかも。