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[コメント] 四月の雪(2005/韓国)

ホ・ジノ監督の思いはいよいよ深まるも、それが空回りしている失敗作、と、とりあえず断言しておきたい。
ぐるぐる

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







キャストが悪かったのか、脚本の問題なのか、それとも演出がおかしいのか。あるいは、それぞれ個々としては悪くないけど、それらが上手くかみ合っていないだけなのか。

見ている間、ペ・ヨンジュンの不自然な演技、無駄な「間」に、イライラさせられっぱなしだった。そのわりに画面から目が離せない。この監督の音に対する神経の濃やかさなどは健在だし、それが美しい絵と相まって、思わず引き込まれる空気感というものは確かにあるのだが。

この優柔不断な寝取られ男は、本来、愚かな男であるに違いない。その「愚かさ」に徹することをペ・ヨンジュンは拒否しているようにも見える。むしろ、純朴で不器用な男というイメージでまとめようとしているかのようだ。しかし、ここは愚かな男の惨めさに徹してこそ、「四月の雪」という救いが意味を持つ気がするのだが。これでは、ラストに何の感動もないではないか。

ソン・イェジンは、かわいいから、許す。これは、そういう風に見られることを狙って作られていると思った。愚かな男は惨めなばかりだが、この見捨てられた哀れな女というものは儚げでいて、愚かさを得ると共にどこか強さを思わせる。演技も悪くないが、短く挿入されるドライヤーのシーンなど、ホ・ジノは「女」を見せるのが抜群に上手い。チラリと見せてこその「女」の生々しさ。

前作とうって変わってアップを多用するカメラは、エピソードもセリフもそぎ落とした脚本の寡黙さに呼応していると思うが、であるならば、画面には暗さももっと必要だったんじゃなかろか。ベッドシーンなど、明るすぎてアイドル映画のようだ。この、メリハリのなさ、テンポ感の欠如、というのは、監督の意図的なものであるには違いないのだろうが、それが狙い通りの効果をあげているとは思えない。

冒頭の、降りしきる雪がヘッドライトの灯りに浮かぶ暗い夜道を病院に向けてひとりでクルマを走らせるカットと、ラストの、おだやかに降り積もる薄明かりの雪の道を今度はふたりであてもなくクルマを走らせるカットの対比など、実に見事なんだけどなあ。

つか、宣伝文句の「それは はかない恋だった。どんなに舞い降りても積もることのない四月の雪のように・・・」って、思いっきり積もってましたけど。ウソはイカンよ!

(評価:★2)

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