コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] あずみ(2003/日)

実はこれでちょっと北村龍平という監督を見直したのだが、このスピード感溢れる演出で『ゴジラ』を作るんだろうな。と思うと、暗澹たる気持ちになるのも事実…
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 実際、この監督B級的アクションはとても小気味良い。スピード感に溢れてるし、物理的にも殺陣の定式にも則らずに無茶苦茶やってくれる。本作はその微妙な点がかなり上手く出せたんじゃないかと思う。金を充分すぎるほどに遣ったB級作品と割り切って観るなら、これほど楽しめる作品もなかろうと思われる。

 本作は完全にキャラクターと殺陣だけに特化しているのが特徴で、細やかな感情の機微や、設定の重要さなどは完全に二の次。少なくとも、その辺の細かいつっこみを全部粉砕してしまうだけのパワーは確かにあった。

 それだけにキャラクターのぶっ飛び方は尋常でなく、自分の手に穴が開いたのをへらへら笑って見てる奴とか、ドアップがやたら多い竹中直人や伊武雅刀とか…中でも凄まじいのがオダギリジョー。こいつが出ると、他のキャラクターがみんな霞んで見えるくらいの存在感で、しゃべり方と言い、ケレン味だらけの立ち居振る舞いと言い、なんかキャラクターがこれで固定しないかと考えてしまうくらい(勿論その後の作品でちゃんとそれだけでないことを示してくれたが)。主人公のあずみ役上戸彩は寡黙な戦士として考えるなら、『修羅雪姫』(2001)の釈由美子よりもキャラはきちんと立っていた…太股モロ見せで、ストイックさで色気を演出したのは、完全に狙ったとは言え、見事な演出。よ〜くキャラクターの馬鹿馬鹿しさ加減を理解してるって事だな。

 殺陣に関しては、多分監督、各キャラに「素のままやれ」と指示を出したんだろうな。斬れるわけがない、単に右から左に剣振り回すだけで、死々累々。馬鹿らしいほどに単純な演技を演出で魅せた。やっぱりこの実力はただもんじゃない。

 そりゃ設定的に言ったら、アラしかない作品なんだが、これをいっそファンタジーであると断定してしまうなら、かなり面白い作品に仕上がってる。これは現代的センスで造り上げたチャンバラであり、それで構わない作品なのだから。ストーリーなど細かいことに過ぎず、要はキャラクターが立っていて、アクションに見栄えがすればいい。その辺の開き直りがはっきり感じられる。この監督だからこそ、こんな荒唐無稽なアクション作品が出来上がったと考えることが出来るんだったら楽しめる。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (6 人)Myurakz[*] peacefullife[*] もがみがわ アルシュ[*] sawa:38[*] 水那岐[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。