コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] バロン(1988/英=独)

鬼才テリー=ギリアムが贈る荒唐無稽な冒険譚。画面が派手で、登場人物が実に活き活きしているのがなんとも楽しい。ギリアム作品は“夢”を題材にする事が多いが、『未来世紀ブラジル』のような悪夢作品も好きだが、本作のように楽しい夢も大好き。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ところで、特撮という面でこの作品を考えてみたい。

 特撮というのは、“あり得ないものを本当にあるように見せる技術”と言って差し支えないと思うのだが、方向性は二系統あると思う。一つは“実際にあり得るかもしれないもの”を撮る技術。ビルの破壊や人間の力ではどうしようもない力学的な指向性を与えること。そしてもう一つは“絶対に起こらないもの”を撮る技術。

 前者は『フォレスト・ガンプ』に登場する羽根から始まり、『アポロ13』の発射シーンなど、実際に起こっているけど、通常では見ることが出来ないものリアル性を強調した特撮となり、CG技術の発達した現在では普通に用いられている。一方後者は『ゴジラ』などの怪獣ものに代表される、通常“特撮”と呼ばれる一連の作品だと言って良いだろう。“あり得ないものをあり得るように撮る”という意味においては同じだが、自然さを強調する方向性と不自然さを強調する方向性の二系統へと分かれるわけだ。

 本作品は明らかに後者。しかも面白いことにその特撮技術を全く自然っぽく作るつもりがないらしく、いかにも作り物のように作っていることが特徴的。特撮技術をふんだんに用い、まるで夢物語のような(事実夢物語だが)作品を作り上げてしまった。“夢”を描くならば、リアリティは必要ない。と言うような開き直りが見られて実に楽しい。

 凄まじい予算を用い、興行的には失敗したそうだが、これ程派手な話をこの時代に作ったと言う事実こそが賞賛すべき点であり、そして何より一流所の登場人物が皆とにかく楽しそうだ。特に月の王に扮したロビン=ウィリアムズの怪演は、彼のファン(つまりこの私だが)には必見もの。勿論主人公のミュンハウゼン男爵扮するジョン=ネヴィルやモンティ・パイソンのメンバーであるエリック=アイドルの好演、ヴィーナス役のユマ=サーマンの美しさ。あっと驚くオチの見事さ等々見所満載で幸せな気分になれること請け合い。

 ギリアム自身もモンティ・パイソンのメンバーなだけに、笑いが見事に私のツボにはまっているし(モンティ・パイソンのメンバーは演劇者であると同時に全員優れた映像技術者でもある)、何よりテリー=ギリアムという名前だけで“良い作品”と思ってしまう私にとっては見事に大当たりを取った作品。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (8 人)YO--CHAN[*] Orpheus わっこ[*] Pino☆[*] ミュージカラー★梨音令嬢[*] アルシュ[*] ina Ryu-Zen[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。