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[コメント] ローマ帝国の滅亡(1964/米)

バランスが良いとは決して言えないけど、光る部分は多数あり。ニューシネマ前の、ギリギリの時代の大作映画として考えておくべきでしょう。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 AD180年の“哲人皇帝”マルクス・アウレリウス帝死去からその子コンモドゥス帝死去までの歴史を綴った作品で、近年でも全く同じ素材が『グラディエーター』(2000)として作られている。

 本作は歴史的事実を下敷きにして、抑圧された男女の恋愛劇を描くという、50年代に流行った歴史スペクタクル作品のを踏襲して仕上げられており、フィクション部分として皇女ルシアとリヴィウスという武将を配して、打ち砕かれ続けた二人の愛が最後に悲しい成就の仕方をする形。

 この辺の描写は大体50年代に作られた大作映画に準じているのだが、60年代に作られた本作の場合は流石に時代の流れが感じられる。50年代の作品だと、どうしても男性中心で、女性は割とステロタイプなものとして描かれているものだが、本作の場合は女性が複雑な内面を持つように描かれているのが大きな特徴だろう。ここに描かれているルシアはしっかり自分の考えを持ち、自分の目で見たものを咀嚼して自分の考えにしている。60年代の女性の地位向上が感じられるのはとても良い。そう言う事で性格のきつそうなローレンを持ってきたのは成功。ただ一方では、その分男優の方に生彩が欠き、冒頭のギネス演じるアウレリウス以外は全員が筋肉馬鹿としか見えないところが残念な所。実際この作品は中盤以降ローレン以外人物を見る価値なし。結果として物語もローレンの方が引っ張る事になり、彼女の出てこないシーンでは中盤以降ダレ場ばかりだったりする。

 一方、戦闘シーンは流石に生の迫力。多数の兵士がぶつかり合うシーンは迫力充分で、馬にまで細かく演技させてるので、合戦シーンは見応えあり。ペルシアやゲルマンの民族ごと異なった衣装も芸が細かい。中盤以降の物語のダレ場も、このお陰で溜飲を下げられる。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)Orpheus 小紫 りかちゅ[*]

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