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[コメント] 乙女ごころ三人姉妹(1935/日)

成瀬監督は本作で自分の作風を手に入れたと言われますが、なるほど納得。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 初期の頃の成瀬監督はかなり冷遇状態にあった。松竹では先輩である小津安二郎監督に押され、しかもタッチが似ていたため、小津の亜流とまで言われて、松竹では「二人の小津はいらん」とまで言われていた。それでどうしても冷遇されてしまい、それまでの作品でもトーキーを撮らせてくれなかったという。本作は実質的に成瀬監督が小津監督の影響下から脱し、独自路線へと転換していく良い機会になったようだ。

 話としては、まさしく成瀬作品。駄目な男に振り回されながら、それでも支え続けて悲惨な目に遭うと言った構図。三人の姉妹を対比させることで、それぞれの生活の中、健気に生きていく女性の姿が描写される。その分女性描写がかなり痛々しい。

 それと、男優役が揃って今ひとつというのも残念なところか。PCLは新興だったし、サイレントからの転換が上手くいってなかったのだろうか?

 ただ、本作の場合、それ以上の魅力があるのは確か。当時の浅草や上野と言った下町の描写が実に見事。というか、戦前でも下町ってこんな賑わいだったんだね。それが分かるだけでも充分と言えば充分。人の家の前で芸妓を行う職業を「門付け」と言っていたことも初めて知った。

 表面的な華やかさと、人間関係の複雑さが妙にはまっているような、そうでないような…成瀬監督の入門編として観るべき作品だろう。

(評価:★3)

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