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[コメント] バイオレント・サタデー(1983/米)

ペキンパーは最後までやっぱりペキンパーでした。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 たった一夜の出来事を描いた物語だが、単純なようでかなり複雑。前提条件がかなりややこしい上に、僅かな時間で裏切りや駆け引きが次々と出てくる。そもそもペキンパーはリズムの良い作品を作ることが得意じゃない上に(見所の演出は突出して上手いのだが、日常描写とかの普通のシーンが今ひとつ)本作は晩年の作品であり、あっぷあっぷして作ったような感じが拭えず。強引にテクノロジーを加えてしまったのも無理あり。基本は騙し合いで話が展開するため演出も地味。蒼々たるキャラを使っている割に目立たせられなかった。と、マイナス面ばかりが見えてしまうのだが、かといって本作が駄作であるとは思わない。

 ペキンパーは長く映画を作りたいと頑張って、ようやく映画監督になり、その後色々干されながらも一流監督して認められていったという過去があるので、殊更映画に思い入れがあるようで、その分テレビ番組に対する悪意のようなものがあるようだ。本作では主人公がTVキャスターであり、しかも隠し撮りした映像をテレビ画面で観るというシーンが多用されるが、カメラやテレビの普及がどれだけプライバシーを損なっているのか。という事を語りたいようにも見えてしまう。考えすぎかもしれないけど、本作においてはむしろその悪意が心地良い。

 後はやっぱり「流石ペキンパー!」の最後のアクションシーンだろう。だらだらと話が続いていたが、ラストだけはきっちり暴力で締めるところもペキンパーらしくて良し。

 遺作としてはちょっと残念な出来ながら、やっぱり最後までペキンパーはペキンパーだったと確認できた。

(評価:★3)

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