コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 東京画(1985/独)

だけど、ヴェンダース監督には一つ言いたい。これも又、日本の形なんですよ。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ドイツ映画界を代表するヴェンダース監督が小津監督大好きというのはなんかとても納得出来る。この人はロードムービーやドキュメンタリーを得意とするが、一旦作品を描くとなると、本当に静かに静かに物語が展開していくし、監督の持つ作家性を非常に重要視しているのが分かる。小津らしく作ろうとしているのだ。と言われれば、確かにその通り。と言えるだろう。

 そしてその敬愛する小津監督の故郷日本を描こうとするのが本作の狙いだが、ドキュメンタリーとしての本作は、小津の生きた20年後の東京を監督はどう見ていたのだろう?

 本作はむしろ作家性と言うより、猥雑な街としての東京を克明に描いている感じがする。小津の描く時代の日本は、もっとすっきりして、家族もシンプルで、娯楽もそうは多くなかった。一方、本作に見られる1980年代の日本というのは、まさにポストモダン華やかかりし頃で、激動の時代を迎えていた。アメリカからの思想をどんどん日本流に消化していった時代と言っても良いだろう。その過程は猥雑そのもの。その猥雑さをカメラは克明に捉えていた。

 結果的にヴェンダース監督は「小津の描いた日本はもう存在しない」と断じている。この映画は監督の失望そのものを描いたものとも言える。それをちゃんと一本の映画にしてしまうのは流石とは言える。レネ監督の『二十四時間の情事』(1959)にもどこか通じるものがある。 

 しかし、特に映画監督が作った風景というのは興味深い。興味本位でない分、その風景は良い意味でも悪い意味でも大変克明。特に夜の描写は際だって素晴らしかった。日本人の目から見たものとは全く違った日本の風景がそこにはあった。

 美しいけど、退屈な作品であることは確かなんだけどね(笑)

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。