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[コメント] 愛についてのキンゼイ・レポート(2004/米=独)

ハリウッドが伝記物作ると、どうしてこんなに画一的になってしまうんでしょうね?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 世界初の“セックス科学者”と言われたアルフレッド=キンゼイ博士を題材とした作品。この人は1948年に「人間における男性の性行為」を、1953年に「人間における女性の性行為」を発表。これまでアメリカではタブーとされていた性衝動について赤裸々に描いたのが大いに受けた。特に一作目が社会に与えた衝撃は大きく、これでマスコミの寵児となるのだが、一方二作目では大きなバッシングを受けてしまい、彼自身は表舞台から姿を消さざるを得なかった(彼はこのレポートを「アメリカ一般」と言っていたが、インタビューを受けた人自体が偏っていたという評価もあり)。しかし、彼の功績は、時として権威主義保守主義に陥りがちなアメリカの学会そのものに大きな影響を与えてもくれた。良い意味でも悪い意味でも歴史に残る人物の一人であったことは事実である。

 私は性を題材とした作品はさほど好きじゃないけど、歴史は大好きと言うことで、割と楽しんで観ることが出来た。キンゼイにかかると性の研究も虫の研究の一環で、「性=生殖行動」と割り切っている辺りが大変面白いし、何より本作はキャラ立ちが実に良い。

 これまで一貫してヒーロー役を演じていたニーソンが新境地に飛び込んだ度胸も買うけど(『エクソシスト・ビギニング』のメリン神父役のオファーを蹴って本作に主演)、それだけのことはある。表情の起伏の少ない冴えない中年役なのに、魅力たっぷりに演じきってくれていた。これまでも上手い役者とは思っていたけど、一皮剥けた感じ。一方奥さん役のリニーは、当初の明るいキャラがどんどんキンゼイによってゆがめられていくという役どころ。結構難しいかと思うが、その中でも個性を見せてくれていた。

 ただ、ちょっと映画の構造は今ひとつかな?ハリウッドメジャー作品は一旦マスコミにもてはやされた後、バッシングに会う人物をやたらと描くけど、古くは『市民ケーン』(1941)からこの年公開の『アビエイター』あたりまで。その構造が全然変わってない。人物を描く場合、なんでいつもこうなっちゃうのかね?と言うか、あまりにも同じすぎてストーリー部分で書きたいことがないよ。

(評価:★3)

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