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[コメント] 續姿三四郎(1945/日)

檜垣源三郎と言う人物にいかに監督が惚れ込んでいたか。それが分かっただけで充分。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 前作のヒットを元に作られた黒澤明監督による続編。最初監督は続編制作に乗り気ではなかったそうだが、作っている内に気分的に乗ってきたとか。撮影自体は終戦直前であったため、非常に苦労があったようだが、焼け跡で公開された本作は、前作を超えるヒットを記録した。

 異種格闘技をメインとするので前作以上に娯楽性を高められているのが特徴だが、檜垣兄弟、特に弟の源三郎の描き方に監督らしいこだわりを感じる。彼の狂気の演出の完成度は後々の黒澤作品に受け継がれていったのだろう。最初に出た時のあの目にはかなりぞくっとする。どこか憑かれたような表情で、ぐるっと道場を見渡すと、それに合わせてカメラもパン。道場全体を舐めていく。ほんの僅かなシーンだが、これは非常に練り込まれたカメラ・ワークと絶妙の間の取り方によって初めて完成される技術だろう。

 それに、ラストの檜垣鉄心と三四郎との戦い。あの極寒の冬山の中での裸足での戦いはかなり見栄えがあるし、その後、言葉を交わす事は無くとも、三四郎と源三郎との心の交流も又良し。

 惜しむらくは、終戦前の物資不足の中で本作は作られたので、フィルムがあまり良くなかったのが理由だろうけど、画面がとにかく荒い。最後の三四郎と鉄心との戦いなど、シルエットだけしか見えない。それが残念。

(評価:★3)

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